Dakota Suite & Emanuele Errante – The North Green Down 〜亡き義妹のためのレクイエム〜
Dakota Suiteのニュー・アルバム『The North Green Down』はイタリア人アーティストEmanuele Erranteとのコラボレーション。Chris HoosonのピアノとギターにEmanuele Erranteが電子音を加え、さらに『The End of Trying』に参加していた名チェリストDavid Darlingが今回も魂の演奏を行っています。
この作品は癌で亡くなったHoosonの義妹に捧げた作品です。10年以上にわたり、サッド・ソングだけを作りつづけてきた彼によるレクイエム。
ふだんサッド・ソングばかりを聴いているようなさすがのぼくでさえこれは聴いていられません。作品に込められた感情の重さと強さがあまりにも巨大すぎて、ぼくの頭のなかの感受性の器ではこの音楽を受け入れることは困難で、いまにも壊れそうになってしまいます。この記事を書くために最後のリスニングを行っていますが、これを書きおえたら、ぼくはこの美しい作品を封印して、もう一生聴かないでしょう。
本来、オススメの作品を紹介するためのブログであり、その趣旨とはまったく異なりますが、おおげさではなくこの作品はほんとうにオススメしません。これを聴かないですむ人生のほうがずっとしあわせだと思います。
例によってChris Hooson自身が作品にコメントを残していますので、日本語訳を載せておきます。
2009年8月、ジョアンナとぼくは知らなかったことを受け入れた。そのときが義理の妹であるハンナと過ごす最後のホリデイになるということを。ハンナが癌におかされ、ぼくらから彼女を奪っていこうとしていることは知っていた。その瞬間がジリジリと近づいてきていたのだ。ぼくらは家族みんなが何年も愛していた場所、サフォークのサウスウォールドに行った。ハンナが苦痛を感じていたのはあきらかだった。海のそばにあるサウスフォールドへと戻っていくとき、「the north green」と呼ばれるサウスフォールドの一部を通った。ぼくは取り残されたような感情に打ちのめされていた。一歩進むその一歩ごとが小さな死を意味していた。彼女を失ってさびしくなることはわかっていた。
「the north green」を彼女と歩くあいだ、ぼくはきみたちがこのレコードで聴いている’north green down’のメインテーマの始まりを感じていた。そして、この音楽を彼女に捧げなければいけないと思っていた。家で録った基本のピアノのギターの曲要素をエマニュエルに送った。以前、彼のレコードを買ったぼくは、彼のなかにこの音楽の重さを感じることができて、思い描いた目的、つまりはハンナに捧げる賛美歌を作るためにふさわしい、共感する魂を感じたんだ。
ハンナは美しく、無私無欲で慈愛をもった女性だった。このレコードは彼女のためのものだ。
(2010年9月 クリス・フーソン)
デジタルはすでにリリースされ、CDは今月下旬に入荷する予定です。
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Andrre『Learn to Love』/Speed Dial 7『Short Rich Apocalypse』入荷!
お待たせしました!入荷待ちだったAnddreのデビュー・アルバム『Learn to Love』とZucchini DriveのTom De GeeterによるSpeed Dial 7のデビュー・アルバム『Short Rich Apocalypse』のLPを同時入荷しました!!
日本では他ではなかなか手に入りませんよ。たぶん。とりあえずAmazonでは買えません。よろしくお願いします〜。
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関連記事:カナディアン・インディー・ヒップホップの最終兵器Andrreの蒼すぎるデビュー・アルバム『Learn to Love』
関連記事:Speed Dial 7デビュー・アルバム『Short Rich Apocalypse』リリース!
Liricoのfacebookページができました
myspaceがあんな調子ですので、Liricoのfacebookのファンページをつくりました。まあ、随分前からmyspaceはログインすらしていない状態だったんですが・・・。今後は英語のインフォメーションはfacebookを使って発信していくつもりです。
はじめたばっかりでさびしかったので、タマス・ウェルズとクリス・ガノそれぞれの来日のときの写真をたくさんアップしてみたので、よかったら見てみてください。
またレーベルやディストリビューションの試聴音源をSoundCloudに切り替えました。こちらもあわせてフォローいただければと。
- p*dis / Inpartmaint inc. SoundCloud
facebookの音楽プレイヤーはたくさんありましたが、Full Time Hobbyの真似をして、BandPageというのにしてみました。SoundCloudやYouTubeとの連携が便利なのです。
Scott Matthewニュー・アルバムのレコーディング終了!
スコット・マシューのニュー・アルバムのレコーディングが終了した模様。これからミックスなどポストプロダクションに入るにしてもおそらく今年の夏くらいまでにはリリースされることでしょう。
Scott Matthew – new song
こちらは新作に収録されるうちの一曲のようです。秋に行われたSpencer CobrinとのElva Snowの再結成ツアーで演奏されたライヴ映像です。これだけで新作の方向性を予想するのは難しいですが、彼のメランコリック・バラードに対する情熱はなにも変わることはないのでしょう。落涙の準備をして待っていますよ。
カナディアン・インディー・ヒップホップの最終兵器Andrreの蒼すぎるデビュー・アルバム『Learn to Love』
カナダのケベックのアーティストAndrreとの出会ったのはたしか2006年のことだったと思います。
myspaceを通してぼくにコンタクトをとってきた彼は当時なんと18歳。sosoやFactorを聴いて育ったという彼の音源は、荒削りながらも間違いなく偉大な先人たちのリリカルさを受け継いだもので、ほんとうに「アンファン・テリブル」というのがぴったりでした。
その後、うたとラップの融合をコンセプトにしたhueの2作目のコンピ『Once a hue, Always a hue』(2007)を作るときに声をかけ、Pierre the Motionlessのビートによるソロ曲「Sunset And Thoughts」と、RomaとのプロジェクトAndrRomakの「Life up There」の2曲を収録しました。
それからもぼくはつねに彼に決して小さくはない期待を寄せていたのですが、AndRomakのデビュー・アルバム『Beauty is but skin deep』が出たのはすでに時代がカナダのインディー・ヒップホップを必要としなくなった感のあった2009年になってからのことでした。
昨年の3作目のコンピ『Hip Hop Hums』に収録したZoënとAndrreのコラボレーション曲「Lonely Kid」のことは以前も書きましたが、間違いなく2010年でもっとも「アンセム」という名にふさわしかったこの名曲を作り上げてくれたことで、ぼくの長年の期待に対する答えとしては十分すぎるほどでしたが、今回、初めてのソロ・アルバム、その名も『Learn to Love』を届けてくれました。
これまで彼がMilled Pavementやhueのコンピに提供した曲やAndrRomakの曲などをAndrreのすべてを詰め込んだと言ってもいい一枚。
ぼくは4年間、この作品を待っていたんだ。
時代が違えば、彼は救世主となっていたことでしょう。だけど、彼は遅すぎたのです。残念ながらこの作品が内容にふさわしいだけのポピュラリティーを得ることはたぶんないと思います。需要と供給のバランスを壊すには作品の内容だけではどうすることもできない。その圧倒的な真実を前にしてなお、ぼくはこの作品のすばらしさを伝えたい。
Zoën、Roma、Pierre the Motionlessら優秀なプロデューサーに支えられ、Nolto、Astronautalis、Nomadといったhueにとって友人たち
とも言えるそうそうたるアーティストが参加していますが、個人的には他のアーティストをフィーチャーした曲よりもAndrreのソロのほうが際立っていると思います。光り輝いていると言ってもいいでしょう。
Zoënとの「Lonely Kid」はなぜか「Learn to Hope」と名前が変わっていますが、やはりこの曲の圧倒的なカタルシス。メラネシアン讃歌のサンプリングとともに歌われる少年の叫び。何回聴いても飽きることなく、いつまでも新鮮さを失うことのないことが名曲の条件だとすれば、これは名曲以外のなにものでもない。Factorたちの「Another Tomorrow」と同等なのです。
Andrre – learn to love – Learn to hope by pdis_inpartmaint
そして、Funkenとの共作「Boys Don’t Cry」。キュアーの同名曲のAndrreなりのカバーであり、トリビュートとも言えるこの曲の爽快さ。もはやヒップホップではないけど、Andrreの音楽の決して枯れ果てることのない蒼さをもっとも表した曲だと言えるでしょう。ひとりでいくつもの声を使い分けるヴォーカルは決して表現力があるわけではないと思いますが、ひとの心をうつ「何か」を持っているんじゃないかと。
BOYS DON'T CRY – ANDRRE & FUNKEN
I can’t figure it out, I wish I was stronger
Hard times are behind so we can make it happen
Someone’s following my voice, I want to be an astronaut and fly away, away
わからないよ ぼくはもっと強くなりたいんだ
厳しいときはもう過ぎ去ったんだ ぼくらならできるさ
だれかがぼくに耳を傾けてくれる 宇宙飛行士になってこの空を飛び立ちたい
(「Learn to Hope」)
だいじょうぶ、Andrre。ぼくはきみの歌を聴きつづけるよ。
30歳を目前にしてこの蒼すぎる作品に出会えてよかったと思います。
p*dis online shopには今月の下旬に入荷予定です。
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