Archive for 2月, 2012
Peter Broderick『http://www.itstartshear.com』ついにリリース!
ピーター・ブロデリック『http://www.itstartshear.com』があした2/16、いよいよリリースされます!
また、アルバム・タイトルのリンク先はまだcoming soonですが、それも今週中にオープンになるとのことです。
製品が届くまですこし不安でしたが、とても満足のいく仕上がりだったのでホッとしています。画像をご覧のとおり、つやなしラフコートの紙ジャケ&メタリックレッドのキラキラ箔押しがすごくきれい!ぜひ手にとっていただけたらうれしいです。
Tamas Wells Japan Tour 2011 後記(後編)
12/9(金)
4度の来日のなかでもっともコンパクトなツアー。2日目にしてツアー・ファイナルです。この日はサウンドチェックの前にラジオのインタヴューの収録。大阪のFM802の「BEAT EXPO」からのオファーで、インタヴューとスタジオ・ライヴの収録が行われました。
日本のラジオのインタヴューはこれで3度目のことでしたが、スタジオ・ライヴははじめてのこと。「When We Do Abigail」と「True Believers」をキムのコーラスを交えて演奏しました。ちなみに収録のあいだ、アンソニーはというと、スタジオの外で待っていました。「なかで座って待ちなよ」って言ったら「いや、いい」って。気づいたらどこかへ消えていました(笑)
インタヴューではミャンマーのまじめな話からだいすきなお好み焼き(と、きびだんご)の話、さらにはこどもの話まで飛び出し、終始なごやかな雰囲気で進んでいきました。「ぼくの娘はぼくの曲は1曲だけ好きな曲があって、あとはきらいなんだ」。そういえば、タマスの娘はもしかして彼のライヴをまだ観たことないのかなと気になって訊いたところ、一度だけあるそうです。ミャンマーで行われた最初で最後のタマス・ウェルズのライヴ。まさに幻のライヴの存在を、ぼくはそのときはじめて聞いたのでした。フランスの大使館かなにかの主催だったそうで、「とても奇妙なライヴだったよ」と、タマス。
最初で最後、と書いたのは、ラジオのインタヴューでも話していましたが、ことしの5月くらいに彼はついにミャンマーを離れ、オーストラリアに戻るそうなのです。彼らの親からの、「孫の近くでいたい」という要望からで、彼は「家族みんなで暮らしていくべき時間が来たんだ」と言っていました。「じゃあ、オーストラリアでもライヴをしやすくなるね」ってぼくが言ったところ、彼は目を丸くして「そっか・・・家族や友だちたちと会うことばかり考えてて、オーストラリアでの音楽活動のことなんてこれっぽっちも考えてなかったよ」と答えました。いかにも彼らしいです。いまはタスマニア島で暮らすネーサンももうすぐメルボルンに戻るそうなので、実に8年ぶりにタマス・ウェルズ・バンドのみんながメルボルンに揃うときがもうすぐ来ようとしています。「じゃあ、ぼく、メルボルンに遊びにいくから、そのときライヴやってよ」。「いいね。じゃあ、シンはDJやってよ」とアンソニー。「OK、でもサッド・ソングしかかけないけどね」。
大阪でのライヴは2007年の最初の来日以来のこと。今回の会場は難波にあるartyard studio。artyard informerというフリー・ペーパー/ウェブジンを運営。かつて、スコット・マシューの来日時にインタヴューを行っていただいた縁があります。ギャラリーなどが集まったアート・ビルの一角にあるホワイトキューブ状の清潔な空間。
オープニング・アクトとして演奏してくれたのは、Weather SpoonというバンドのヴォーカリストでもあるトラノさんのソロTorenoによるギター弾き語り。Dakota Suiteを愛する彼は日本人アーティストでは珍しくLiricoとも共鳴するシンガー・ソングライターなのです。この日も期待に応えてくれていたと思います。「Lapis Lazuli」は名曲。
続くキムはきのうと同じセットでしたが、1曲違っていたのは、翌日に結婚式を控える友人へ捧げたウェディング・ソング。昔、結婚した親友のために作った曲らしいです。この話は後述しますが、こういう彼のマメさは正直タマスにはないものですね。
そして、いよいよタマス・ウェルズの登場。この日も会場がざわざわしてるなか、さらっと「Fire Balloons」を演奏しはじめました。撮影した映像観ると特に気になったんですが、次からはもっとタメを作るように注意しておきます(笑)
結論から書くと、この日も東京公演と同じセットで、「Open the Blinds」を追加した点のみが変更点です。ツアーの前には新曲も演奏すると言っていたのですが、残念ながら結局のところ新曲が演奏されることはありませんでした。
この日は特に後半に演奏した曲がどれもよかったと思いました。「True Believers」「England Had a Queen」「Lichen and Bees」という流れはとても心地よかった。「True Believers」は昨年はタマスのソロで演奏していましたが、今回は3人で。今回しばしば観られた光景ですが、ギターのリフをタマスとキムが向かい合って弾き合うのはこれまでのライヴではあまりなかったことなので、なんだか新鮮な気分。みんなの表情がはっきりと見えるのもちいさな会場だからこそでしょう。ソノリウムのときのような緊張感はまったくなかったですが、とても親密な雰囲気に包まれました。
「England Had a Queen」。昨年のソノリウムのライヴでアンソニーが入るところを間違えた事件がありました。ことしのアンソニーはそれをネタに、タマスとキムのほうをニヤニヤ見ながら「さあ、間違えるぞ」ってかんじで違う箇所で弾くポーズをとっていたのは最前列のお客様なら気づかれたかもしれませんね。初日はまだタマスもキムも苦笑して反応してあげてましたが、この日はガン無視(笑)。この一連のネタは映像に残っていますが、恥ずかしくてお見せできるようなものではありません・・・。ちなみに「For the Aperture」のバンジョー・ソロ、この日は思いっきりミスって会場のみんな爆笑・・・。あのひとはほんとうに憎めない男なのです。・・・いつか完璧なライヴを見せてくれる日が来るといいな。
なんだかアンソニーのことをおとしめてばかりなので、フォローしておかないと。特に初日でとても効果的だったあの映像(VACANTのプロジェクターはすごくよかった)。写真が少しずつ変化していく美しい作品ですが、あれは実は彼の作品なんです!すごいね、アンソニー!
本編を締めたのはザ・ビーチ・ボーイズ「Do You Wanna Dance」のカヴァー。彼にとってどの曲をカヴァーするのかというのは、ぼくらが思っているよりもずっと難しい問題らしく、その基準とは「クラシックなメロディーを持っているか」ということだそうです。「Moonlight Shadow」と「Do You Wanna Dance」はそういった厳しい戦い(?)の末に勝ち残った美しい2曲。その場でリクエストをしてもすぐに演奏できるほどの器用さは彼にはないので、タマス・ウェルズへのリクエストは1年前にお願いします(笑)彼は歌詞を覚えるのが得意ではないのだ。歌詞以外に関する記憶力はすごくいいんですけどね。
Tamas Wells – Do You Wanna Dance? (Live at artyard studio)
アンコールの「When We Do Fail Abigail」は東京と同じアカペラ・ヴァージョン。これは今後、彼らの新しい武器として定着していくんじゃないでしょうか。
平日開催だったため、両公演とも集客は思うようにはいきませんでしたが、2011年という年の締めくくりをタマス・ウェルズのライヴで行えたのは、きっと多くのかたがたにとって、このうえない幸福だった、そんなライヴだったにちがいないと信じています。ぼくは今回で彼のライヴを16回観たことになり、おそらく世界でいちばんタマス・ウェルズのライヴを観たひとのひとりだと思いますが、何度観たとしても新鮮さを失わない、いつも魔法を感じさせる彼の歌を、どうすればよりたくさんのひとに聴いてもらえるか、それが大きな悩みです。ツアーを終えてから気づいたのですが、今回がぼくが担当した10回目の来日ツアーでした。5年で10回。年に2回と考えるとすごく多い気がしますが、とりあえずひと区切り。その10回のツアーで経験したことやいろいろなひとたちとの大切な出会いすべてがかけがえのないものです。
Tamas Wells – When We Do Fail Abigail (Live at artyard studio)
今回の公演にお越しいただいたみなさまや、VACANT、Fly sound、artyardのみなさま、FM802のみなさん、通訳をしていただいたyasさん、その他ツアーに関係したみなさまがたばかりでなく、これまでの10回のツアーに関わったすべてのかたがたに感謝したいと思います。
ツアーをやるときはいつも「これが最後」という覚悟をもって臨んでいます。生半可な思いではないからこそ、喜びや感謝も大きいのです。震災以降、その思いはより強くなりました。会えるときに会いたいひとに会おう。それはいまやみなさまの頭のなかにあることだと思います。タマス・ウェルズの「次」はいつかわかりませんが、3月にはラディカル・フェイスのツアーが決まっています。たくさんのかたがたとお会いできることをたのしみにしています!
番外編へとつづきます。
set list 2011.12.09 @ 難波 artyard studio
1. Fire Balloons
2. Vendredi
3. The Crime at Edmond Lake
4. Your Hands into Mine
5. Moonlight Shadow
6. Thirty People Away
7. Valder Fields
8. Fine, Don’t Follow a Tiny Boat for A Day
9. Nowhere Man
10. Signs I Can’t Read
11. The Opportunity Fair
12. For the Aperture
13. Writers from Nepean News
14. Open The Blinds
15. Melon Street Book Club
16. True Believers
17. England Had a Queen
18. Lichen and Bees
19. Do You Wanna Dance
[Encore]
1. When We Do Fail Abigail
2. Reduced to Clear
[album of the month 2012.01] Misophone『Songs from an Attic』
カタログとウェブの更新をおえた毎月上旬はいちばん手が空く時期なので、この時期をつかって毎月 [album of the month] を書いていこうとふと思いました。あんまり強くオススメするわけじゃないけど、個人的なメモとして。つづくかわからないけど、とりあえず1月分です。
ブリストルの謎のデュオMisophoneの新作。まるでもう何十年も前から音楽をつくりつづけているような雰囲気を漂わせて、けど、巨匠のような威厳は一切なくて、近所の屋根裏部屋にこもってこっそり何年も作りつづける奇人のような佇まい。
作家であるWalshのリリックは見事で、ときにまどろっこしく、皮肉っぽく書かれており、Sの曲は相変わらず華やかでごちゃごちゃしていて、このひとたちの変わらなさに安心感すら感じてしまうのです。
ムーンドッグとアメリカン・フォークとジプシー・ミュージックを溶け合わせた異形のポップ・ソングス。聴けば聴くほど不思議なサイドショー・ミュージック。さわやかさのなかに暗さを閉じ込めた彼らのサウンドは偉大だと思います。名曲「The closest I’ve ever got to love」はぜひ聴いてほしいです。
Nomadニュー・アルバム『No Magic』インタヴュー
昨年12月、ノマドの3年ぶりとなる新作『No Magic』がMarathon of Dopeよりフリー・ダウンロードというかたちでリリースされました。
前作『Cats and Babies』でシンガー・ソングライターとして開眼した彼がまたヒップホップ・ビートへと戻ってきた作品。果てのないイマジネーションとフェアリー・ヴォイスを持ったスペシャル・ワン。決しておとなになりたくない青年がこの作品で語るのは、若さと初期衝動でしか生まれない「魔法」を失ったときにこそ生まれ出す世界でした。
よりたくさんのひとに聴いてもらいたいからこそ、フリー・ダウンロードでのリリースを決めた彼の願いが叶うことを、彼とともにこの5年間を歩んできたぼくも願っています。まだ未聴のかたはぜひ聴いてみてください。下記のリンクからフリー・ダウンロードできます(要メアド)。
Nomad “No Magic” | Marathon of Dope
以下は『No Magic』に関するインタヴューです。彼らしいナイーヴさが伺える内容になっています。まわりがどんどん音楽活動をやめていくなか、「子どもができたことで、じぶんの音楽に対する情熱がなくならなかったという事実がうれしかった」と語るノマド。かつて彼は「Shadowanimals」のなかでこう歌っていました。
「We keep going every night and day. we never quit」と。
Interview with Ruben Kindermans
- まずはじめに、3rdアルバム『No Magic』のリリースおめでとうございます。前作『Cats and Babies』から3年かかりましたが、製作はどれだけ大変でしたか?
ぼくにとって、新しいアルバムの正しいサウンドを見つけることはいつも大変なことなんだ。山ほどの曲を作りはじめてみたけど、いろんな理由で完成しなかった。でも、ニュー・アルバムのリリースまでもうこれ以上長いあいだ待ちたくなかった。それにふたりの子どもたちが一日中寝てるときに家で音楽をつくるのは簡単なことじゃないんだよね。
- 『Cats and Babies』はよりシンガー・ソングライター寄りの作品でしたが、『No Magic』では『Lemon Tea』のサウンドに戻ってますね。『Lemon Tea』と『Cats and Babies』の中間・・・2ndのより洗練されたソングライティングを1stの手法に落とし込んだ、というのが第一印象でした。この変化について教えてください。
『Lemon Tea』と『Cats and Babies』をミックスしたアルバムを作ることは意図したことだったよ。『Cats and Babies』にはいまもとても満足してるんだけど、ヒップホップの影響のあるサウンドじゃなくて、独自性は少なかったと思ってる。それとライヴをやったとき、ビートが恋しいと思ったりもして、だからビートをじぶんの音楽に取り戻すことにしたんだ。
- この作品も以前の作品のようにじぶんの部屋で作ったんですか?
うん、いまもまだぜんぶ自分の家でレコーディングしてる。そのほうがプレッシャーが少ないから家でのレコーディングのほうがすきだよ。音楽をつくるときはムダに時間を使って実験してみたいんだ。
- リリックはどこで書きますか?あなたは確かいつもはメロディーを先に書くみたいですが、どのようにリリックを書いていますか?
いつもそんなにたくさん書き留めないんだ。いつも意味のないことばでメロディーを歌いはじめる。メロディーを50回くらい何度も何度も歌ったとき、正しいことばがおのずと現れるんだよね。
- あなたは「shadowanimals」で「ノマドを見てみなよ・・・やつは魔法をつかう」と歌っていました。でもこのアルバムのタイトルは『No Magic』ですね。これはとても示唆的でなにかを象徴しているように思えました。ノマドは魔法を失ってしまったんでしょうか?このアルバム・タイトルを選んだ理由を教えてください。
これは若いミュージシャンのままでいるための魔法についての話。ぼくらは音楽を作りはじめて、その音楽はほんとうに特別なものだった。あんまりあれこれ考えずにただ音楽を作って、それなりの成功もあった。
でも、年をとって、すばらしい音楽を作ることが十分ではないと気づく。音楽で成功するためにはビジネスマンになる必要がある。ぼくはじぶんが30歳になって、すべてがとてもシリアスであるという事実もすきじゃないんだ。かつて、親のコンピューターと、安っぽいマイクで音楽を作ったときに見つけた、最初のころの魔法、そういうものをぼくはもう失ってしまったんだ。
- 「Hajani」はぼくのお気に入りです。この曲は2010年のmarathon of dopeのサンプラーに収録されていました。アルバムのなかで最初にできた曲なんですかね?「I say Hajani Hajani…」というリリックはぼくには呪文のように聞こえます。どういう意味なのか教えてください。
「Hajani」はぼくの造語なんだ。ライヴで演奏するときに、お客さんに言ったんだ。これは幸運をもたらし、病気になったり落ち込んだりしたとき、癒してくれることばだと。この曲はジョークのつもりだったんだけど、「Hajani」ってことをばをステージで歌ったら、ほんとうに魔法みたいに思えたよ。
「Son, if you don’t know」や「Echo」がこのなかでいちばん古い曲だね。「Hajani」は元々アルバムに入れるつもりはなかったんだけど、みんながとても気に入ってくれてたから、入れることにしたんだ。
- あなたはゴーストの名前を「miyagijo(ミヤギヨー)」と名付けましたね。ぼくらは2008年のツアーのとき、「ミヤギ」(仙台)に行ったけど、それは気づいてましたか?また、最後の曲はタイトルが「Asian Dreams」で、曲もオリエンタルな雰囲気です。これらの曲を作るとき、日本のことは頭のなかにありましたか?
ミヤギが日本の地名だと知ってたよ。そのあとに「o」って文字を入れたのは、日本にいたとき、日本のみんながぼくのことを「Nomad」(ノマッドゥ)じゃなくて「Nomado」(ノマド)って呼んでたからなんだ(笑)
あと、宮崎駿の映画のなかに出てくるゴーストからインスパイアされたから、その名前を日本語っぽく聞こえるようにしたかったんだよ。ぼくにとって日本や日本の文化はとてもミステリアスで、だからとてもだいすきで・・・日本にもぼくの音楽を聴いてくれるひとがいるってことがとても誇らしくもあるよ。
- あなたはいま30歳で、父親にもなりました。それがアルバムになんらかの影響を与えていますか?
ぼくは『Cats and Babies』はより成熟したアルバムだったと思ってる。『No Magic』は、より遊び心があるように、エレクトロニックに作った。じぶんが年老いたなんて感じたくなかったからね。ぼくの知ってるひとたちのなかでも、子どもができて音楽を作るのをやめてしまった人たちがたくさんいるのも知ってる。父親になることはこの世でいちばんすばらしいことだけど、そのことでじぶんの音楽への情熱がなくならなかったって事実がすごくうれしいよ。
- 日本のファンへMarathon of Dopeコレクティヴについて紹介してください。
Marathon of Dopeはトム・デ・ギーター(ケイヴメン・スピーク、ズッキーニ・ドライヴ、スピード・ダイアル7)とパトリック・スケーン(ピピ・スキッド)によって運営されてる。オンライン・レーベルでアルバムはフリー・ダウンロードできるんだ。また、じぶんたちのお金を寄付することを選ぶこともできる。純然なヒップホップ・アーティストもいれば、エレクトロ・ポップやその中間もいる。ヴァラエティに富んだアーティストがそれぞれすばらしい音楽を作ってるんだ。
- 共感を感じるアーティストはだれかいますか?また、お気に入りのアルバムがあれば教えてください。
きのう、ブリュッセルでおこなわれたラディカル・フェイスのライヴにいったよ。彼の『Ghost』ってアルバムがだいすきで、新しいアルバム『The Family Tree: The Roots』も会場で買ったよ。こっちもものすごくいいね!
(インタヴュー質問:大崎晋作)
Nomad – Son, if you don’t know
Lirico / p*disニュー・リリース:Peter Broderick『http://www.itstartshear.com』詳細
すこし遅くなってしまいましたが、Peter Broderick新作『http://www.itstartshear.com』のことについて書きたいと思います。
おそらく、Liricoが新たにリリースするアーティストのなかでは、リリース時点においてはいままでいちばん名前が知られていると思います。ポートランド出身ベルリン在住の25歳の音楽家Peter Broderick。Efterklangのサポートメンバーとして最初に注目を集め、その後、ソロ作品や多くのコラボや映画、ダンス作品のスコアを手がけてきて、実際、p*disでも彼の作品はほとんどすべて流通を行ってきました。
今回、ライセンス・リリースするのは2008年の『Home』以来、3年半ぶりとなる2枚目のヴォーカル・アルバムです。詳細は以下のリンク先をご覧ください。
詳細:http://www.inpartmaint.com/lirico/lirico_title/LIIP-1514.html
上記のように、これまでp*disでずっとサポートしてきたため、今回、品番はLiricoの「LIIP」品番で、リリースもとのレーベルはLirico / p*disという扱いにしていますが、いずれにせよ、担当はおなじなのでわりとどうでもいいことですね。むしろわざわざ“Liricoのほう”に迎え入れたのは作品の美しさがふさわしいと思ったからです。
昨年、ともに来日したベルリンのピアニストNils Frahmがプロデュース/レコーディング/ミックス/マスタリングまですべてを担当し、Nilsのスタジオで二人三脚で製作されたこの作品は、モダン・クラシカル路線と、フォーク路線、彼がこれまで作品を作る際にあえてみずからに課していたあらゆる制約を取払い、彼のすべてがつまったまさに集大成的な作品となりました。
アルバム・タイトルは「http://www.itstartshear.com」。本国のリリース日の2/21以降、このURLにアクセスすれば実際に歌詞やアートワークやテキストなどが参照できるようになる予定です(ウェブはまだ構築中でぼくもまだどのような内容かは知らされていません)。このインターネットを用いたプロジェクトとのタイアップは、いまや日本以外ではマーケットの中心となったデジタル・ダウンロードに対するPeter Broderickなりの意思表明でもあるのです。
Peter Broderick / It Starts Hear
こちらは先行で公開された「It Starts Hear」のミュージック・ヴィデオ。Nils Frahmによるシンセ・ベースに乗せて、皮肉たっぷりのリリックが淡々と語られるポエトリー・リーディング。そして、一方でものすごくメロディックに唱えられるURL。これまでの彼の音楽のファンからすれば、意外に思われるかもしれません。契約上、いまはまだ他のトラックをお聴かせすることはできないのですが、この音楽的挑戦の意味について、アルバムのすべてを聴けば必ずだれもが唸らされることになるでしょう。
美しいピアノとストリングスや、ポートランド魂の宿るフォーキー・ソングから30年以上前に実夫がひそかに作っていた曲のカヴァー、果てはラップ(?)やエレクトロニック・ビートの入った曲まで、とにかくスケールの大きいポップ作品です。
最初にリリースしたソロ・ピアノ作品『Docile』とピアノとストリングスによる『Float』の印象が強かったためか、ぼくはずっと、Peter Broderickのヴォーカル路線は彼の「アナザー・サイド」だと思っていましたが、今回の作品を聴いて、それが大きな勘違いだと気づかされました。彼は高校生のころから歌のある曲を作りつづけてきたわけで、モダン・クラシカルのイメージはまわりが勝手に植えつけたものでしかなく、その枠の大きさはもはやこの音楽家にとって十分ではないのだと思います。
Peter Broderick / Everything I Know | Live at Flèche d’Or, Paris
こちらはアルバムの最後を飾る名曲「Everything I Know」のパリでのライヴ映像。日本でも演奏していましたね。
国内盤にはボーナス・ディスクとして4曲入りEP『/ep』(最初、『Live at Durton』という名前でしたが変更になりました)がついた2枚組スペシャル・エディションです。内容はこのためにレコーディングした、アルバム収録曲の4曲のよりシンプルなセットでのライヴ・ヴァージョン。タイトルでピンときた方。そうです。本編タイトルのURLのうしろに「/ep」をつけてみると・・・ライヴ映像などが観れるようになるみたいですよ。
このエディションは初回生産分500枚限定です。一発録りという性格上、アルバムの本編以上に美しい瞬間もいくつもある4曲です。同じライヴ・レコーディング作品『How They Are』や昨年の来日ライヴに惚れた方はぜひこのエディションを聴いてもらいたいと思います。発売は2/16予定。ぜひチェックしてください!
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