hue and cry

Archive for 9月 30th, 2008

Matt Elliott 『Howling Songs』

Matt Elliottのニューアルバムが出ます!と言ったところで喜ぶ奇特な方は日本では20人くらいしかいないとは思いますが、日本でも有数のMatt Elliottファンだと自称するぼくですので、これは書かせてください。

というわけで、Matt Elliottの『Drinking Songs』、『Failing Songs』に続くニューアルバム『Howling Songs』が10月にリリースされます。Matt Elliottについて書くには何字あっても足りないので、以下、ぼくがp*disの受注用に書いた端的なテキストですので、参考にしてください。

third eye foundationことmatt elliottが放つ、『drinking songs』『failing songs』に続く “絶望歌の三部作”の最終章。その名も『howling songs』。UKエレクトロニック・ミュージックの象徴的存在であった彼がラップトップを捨て去り、シンガー・ソングライターとして覚醒する過程が前作『failing songs』までに刻み込まれていました。本作では強すぎる自己沈潜と自己批評の結果、絶望を通り越して、世界に対する怒りが渦巻いているかのようです。前作で聴くことができたスラブ・ミュージックをアレンジした繊細なフォークの美しいメロディーをずたずたにするディストーション・ギター・ノイズの狂気。これまでで最も内省的で悲劇的でありながらも最も凶暴で恐ろしい作品です。まるで幽霊が歌うようなmatt elliottの歌声は、恐怖とはなにかということを問いかけているかのよう。ジャケットも過去最高に恐ろしいです。ちなみに2009年にはなんとTEFが復活との情報が!?

liricoでずっとプレゼンテーションしてきた「かなしみ」を軽く通り越して、彼が歌うのは「絶望」です。共感の余地すら与えない圧倒的な感情の塊を受け止めるのはなかなか至難の業だと思います。正直なところ、オススメはできないです。気軽には聴けないですし、この作品を聴かずに済む人生のほうがずっと幸せだとすら思います。覚悟のあるひとだけ聴いてください。

「I Name This Ship The Tragedy, Bless Her & All Who Sail With Her」という深い曲名に思わず唸ります。かつて自らの人生を「sinking ship」に例えた彼ですが、ここでは私たちが生きる世界そのものを「悲劇」と名付けてしまいました。この作品で唯一不協和音の聴かれない穏やかなインスト曲に「Song For A Failed Relationship」と付けてしまう彼の批評性を理解してくれるひとはやはりあまりいないのかもしれませんね。上記のとおり、2009年にはなんとThird Eye Foundation名義のアルバム・リリースも予定されているようです。再びラップトップを手にした彼がどんなすごい音を鳴らすのか、想像しただけで恐ろしいです…。

試聴はmyspaceで。
http://www.myspace.com/mattelliotandthethirdeye

日本入荷は10月下旬予定です。

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