hue and cry

Paranel 『タイムリミットパレード』に寄せて

Paranelはぼくがhueをはじめた初期(2006年くらい)に知り合い、同い年ということもあって親睦を深め、それ以来、遠くもなく、近くもない、絶妙の距離感でつきあってきました。ぼくにとっては仕事という利害関係にとらわれない意味においてアーティストのなかでは友人と言える数少ないひとだと思っています。

そして彼はLow High Who?というレーベルを立ち上げ、ぼくはhueをやめ数年がたち、LHW?はいまや独自のポジションを築き上げる注目のレーベルにまで成長しました。LHW?が大きくなればなるほど、レーベルオーナーとして、プロデューサーとして、デザイナーとして、あらゆる役割をひとりでこなす彼がソロ・アーティストとしてじぶんの音楽を作る時間は限られていきます。端からみているとその点がぼくは常々残念に思っていたわけですが、こうしてParanelのニュー・アルバム『タイムリミットパレード』がリリースされたことをうれしく思います。

セルフライナーノーツを読んでいただければ、作品についてぼくがあれこれ書く必要はないです。この作品をはじめて聴かせてもらったのは、ちょうどタマス・ウェルズの新作『On the Volatility of the Mind』ばかりをずっと聴いていた時期のこと。それからはこれらふたつの作品を交互に聴いています。どちらの作品も「孤独」について歌われています。悲しみに対するアプローチは違うけど、いずれも最後に収録されている、Paranelの「ひとり」とタマス・ウェルズの「I Left That Ring on Draper Street」を聴いた後の余韻はとても似ていると思いました。さらにはラディカル・フェイスの『The Branches』の最後の曲「We All Go the Same」ともよく似ている気がします。繊細で美しく、少し怖くもあるいずれの曲も、「じぶんがいなくなった後の世界」を想像させるからでしょうか。その感覚は個人的に長い間抱いてきたものと似ていたので、「ひとり」という曲は聴いていてなんだか懐かしい気がしました。

10代が多いと言われるLow High Who?のリスナーの子たちがこの作品にどんな反応をしますのかがいまいちばん興味があります、とか書くとおっさんくさいですね…でも、ぼくは単純に、いまこのタイミングでこれが聴けてよかったです。

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