hue and cry

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egil olsenドキュメンタリーフィルム+ライヴ映像

先月、最新作『ooo what happened』をリリースしたエギル・オルセン。

アルバムのメイキングを収めた約20分のドキュメンタリーフィルムが公開されました。「新しいアルバムをつくるにあたり、まずじぶんのスタジオを建てるところからはじめた」と、まるで「ザ!鉄腕!DASH!!」のTOKIOのようなDIY精神。だけど、もともと音楽以外にアートワークもヴィデオもひとりで作っていたので、スタジオをつくっても不思議ではありません。シンガー・ソングライターの孤独を体現するなかなかのエピソードではないでしょうか。

「これまではうわべよくみせていたけど、今回は闇を掘り返そうとした」
「これは闇や無からいかに抜け出すかということについて作品なんだ」

と、『ooo what happened』のパーソナルでダークな雰囲気について説明しています。アルバムの最後を飾る「About to Leave」のミュージックビデオというかたちでこのドキュメンタリー作品は締めくくられます。「じぶんの心をより明るくするのが怖かった。シンガー・ソングライターにとっては悪くおもえたから」と歌うエギルの複雑な心境を示唆するように、カメラは結局アルバムには収録されなかった「WHY SO SAD」という曲名をとらえます(15:20くらい)。

難産だったとおもわれるこのアルバムによりすこし近づけた気がします。

そして、一方でこちらは多幸感あるライヴ映像です。2014年の夏に行われたノルウェーのフェスØyafestivalen出演時のライヴ。ノルウェーの国営テレビ局nrkによる37分の映像。

7人編成というエギル・オルセンにとってもっとも大きな編成でのライヴです。女性コーラスふたりのうちのひとりはオペラ歌手でもある彼の奥さんが務めています。

「Singer / Songwriter」の意外性のあるはじまりにいきなり笑みがこぼれますが、日本でも披露していた彼の芸もいろいろみれて終始ニヤニヤしてしまいます。「what happened」や「good talk」あたりの新曲も披露していて、アルバムの印象とはまた違う、エギルらしいハッピーなライヴ。ぜひお時間あってもなくてもご覧いただきたいとおもいます。

特に「good talk」からバンドメンバー紹介を挟んで、『アニー』の「Tomorrow」のカヴァー(日本でもカラオケで歌ってた!)というラスト2曲がほんとうにすてき!!

egil olsenニュー・アルバム『ooo what happened』

ノルウェーのシンガー・ソングライター、エギル・オルセンのニュー・アルバム『ooo what happened』がついに届けられました。

*詳細はこちらをご覧ください:http://www.inpartmaint.com/site/12347/

2013年11月の来日ツアーのときは翌年の春までには完成すると言っていたのですが、結局それから1年も経ってしまいました。新たに建てた自分のレコーディング・スタジオにてレコーディング。音楽的にはこれまでの3枚のアルバムからは少し変化があり、その持ち前の美しい歌声は健在ですが、彼のコレクションのシンセサイザーを多用することで浮遊感と不思議なメランコリアが支配する作品となっています。

来日ツアーでも披露したシングル「Find A Way」は希望を示唆する内容を歌っていたので、新しいアルバムはそんなモードになるのかなという予感がありましたが、蓋を開けてみると全体的に内省的でメランコリックな雰囲気です。

そもそもタイトルからして「ぼくの人生になにがあったのか?」という意味深なもの。サウンドだけでなく歌詞からもところどころ「迷い」のようなものを感じさせます。来日のとき、すきあらばおもしろいことを言おうとしていたあの天真爛漫なエギちゃんからは意外ですが、なんとなく想像はつきます。確認したわけではないですが、制作中に起きたオルセン夫人の妊娠というできごとが影響しているのかな、と(出産は2014年12月)。

「なんとか踏ん張って、なんとかあきらめないでいるんだ
ぼくはなんとか進みつづけるよ」(「tryin」)

音楽で生計を立てるプロフェッショナルなシンガー・ソングライターである彼の迷いと葛藤を反映したようなこのアルバムはとてもパーソナルですが、このタイミングでこのフラジャイルな作品は生まれないといけなかったのでしょう。シンガー・ソングライターとして生きていくこと。もしかしたらエギル・オルセンは他のLiricoのアーティストの誰よりも自覚的なのかもしれませんね。

ボーナストラックとして、アルバム未収録曲と、2013年の来日ツアーのライヴ音源のダウンロード・コードがつきます。こちらもとてもすばらしい内容ですよ!

春のLiricoまつり!

 

3月・4月発売のLiricoの新譜3タイトル(エギル・オルセン、ザ・レジャー・ソサエティ、ピーター・ブロデリックのニュー・アルバム!)をLiricoウェブサイトでご購入いただいた方には、タマス・ウェルズ(2014年6月)、ラディカル・フェイス(2015年2月)、ガレス・ディクソン(2013年11月)の貴重な来日ライヴ音源をプレゼント!!

対象商品:
1. egil olsen『ooo what happened』(AMIP-0060/3月26日発売)
*詳細:http://www.inpartmaint.com/site/12347/
2. The Leisure Society『The Fine Art of Hanging On』(AMIP-0061/4月13日発売)
*詳細:http://www.inpartmaint.com/?p=12429
3. Peter Broderick『Colours of the Night』(LIIP-1521/4月26日発売)
*詳細:http://www.inpartmaint.com/?p=12571

※特典の対象は上記3点すべてお買い上げのお客様に限ります。
※特典の送付はPeter Broderick『Colours of the Night』発送のタイミングとなります(4/24ごろから発送開始)。

※キャンペーンは予告なく終了する場合がございます。あらかじめご了承ください。

egil olsen / Gareth Dickson Japan tour 2013ツアー後記

4ヶ月遅れでツアー後記を書くことにいかほどの意味があるのかわかりませんが、6月のタマス・ウェルズのツアーを控えるいま、やはり振り返っておくべきだと思い立ち、少しことばを費やそうと思います。

はじまりはガレス・ディクソンとのやりとりがきっかけでした。日本に行きたいから誰か紹介してくれないか、と。かつて、数年前だと思いますが、ぼくは彼に「ニックド・ドレイク」プロジェクトの音源化を提案したことがあったのですが、そのときはあまり乗り気じゃありませんでした。「ツアーやるならなにかリリースがあったほうがいいよ」と改めて提案してみたら、今度はやる気になってくれて、ニックド・ドレイクの『Wraiths』のリリースが実現したのでした。『Wraiths』はぼくが長年温めていた企画でしたし、ガレスにとってもとても意味のあるものになりました。そのことは後述します。

ツアーとリリースのプロジェクトが動きはじめたとき、ガレス・ディクソン以外にもう一組を招いてジョイント・ツアーという形にしようと考えましたが、最初はもう一組はエギル・オルセンではありませんでした。実はもう確定してすべてが動いていたときにそのひとからNGが出て、当然のように困り果てたものの、急遽連絡してみたらエギルは即答で「日本に行きたい」と言ってくれました。8月のおわりのことでした。

ガレス・ディクソンとエギル・オルセン。音楽性も性格もまったく違うふたりの共通点をがんばって挙げようと思ってもなにも思い浮かびませんでした。彼らは日本ではじめて出会い、ともに旅をし、お互いを認め合い、そしてもしかしたらもう二度と会わないかもしれません。出会いと別れに伴う喜びと悲しみを凝縮したのがツアーのおもしろさだとしたら、このツアーもいろんなことが起こったと思います。ガレス・ディクソンの10年くらい着つづけているような毛玉だらけのトレーナーやエギル・オルセンの「egil olsen, singer/songwriter」と書かれたネームプレートなんかをたまに思い出してはぼくはずっとニヤニヤするのでしょう。

今回のツアーで4公演を行ったのですが、毎回、交互にトリを入れ替えました。ガレス・ディクソンの演奏には安定感がありましたが、エギル・オルセンはトリの日の出来が抜群によかった。たぶん彼は「トリ」という重要な役割を与えればその分はりきるタイプなんでしょうね。こういったジョイントツアーをおこなったのははじめてですが、たとえばエギル・オルセンが「i love you Nagoya」と言えば、ガレス・ディクソンが「i also love you Nagoya」と言う。エギルが「ガレスよ、MCとはこうやるんだよ」みたい言えば、ガレスは「ぼくのグラスゴー訛りでなに言ってるかわからないかもだけど、普段のぼくはもっとおもしろいんだよ」みたいに言う。そんなある種の対抗心がお互いのパフォーマンスにいい影響をもたらすのかもしれないですね。

ガレス・ディクソンのギターにディレイをかけた独特の演奏とささやくようなヴォーカルはいつも「向こう側」の世界を見せてくれました。でも、あまりにニック・ドレイクにフォーカスされすぎてしまったことについては、ぼくはちょっと責任を感じました。ガレスは『Wraiths』を作ったことで、「ニックド・ドレイク」プロジェクトは終わりにすると言っていて、実際にジャパンツアー以降、ニック・ドレイクのカヴァーはライヴで演奏していないようです。いろんなひとがガレスのカヴァーがニック・ドレイクにそっくりだと言っていましたが、いちばん近くにいた人間として、それでもぼくは彼のニック・ドレイクはとても「ガレス・ディクソン的」だと思いました。観客の期待に応えるかのようにツアーファイナルのCAYでの公演で予定よりもニック・ドレイクの曲を多く演奏していた彼の健気さに痛々しさも感じたりしましたが、そのあとの「Get Together」のクライマックスの圧倒的な神々しさを決して忘れないでしょう。ニック・ドレイクとか12Kとか関係なく、ガレス・ディクソンはガレス・ディクソンでした。

そしてエギル・オルセン。ライヴのたびに「My name is egil olsen. I am a singer / songwriter. i’m gonna play ‘singer/songwriter’. from my 1st album “I am a singer/songwriter”. 」という笑いを誘うお決まりの自己紹介を欠かさないのは、この曲が鬱病を克服し、じぶんの存在意義を高らかに歌い上げた曲だから。ガレスとは対照的に(意外にも)地に足の着いた、シンプルなギター弾き語り(たまにピアノも)はとても美しく親密なもので、彼のスペシャルな歌声はあらゆるひとたちの心のバリアを消し去るような温かみに満ちていました。菅野よう子との一連の仕事で近年名前を知られるようになりましたが、このツアーでは映画『ペタル ダンス』の主題歌「crouka」はギター弾き語りでカヴァーしました(オリジナルはピアノ)。菅野さんとエギルで考えたノルウェー語と造語による歌詞は異世界感満載でしたが、実際に演奏されたギターヴァージョンはふわふわした風船のようにエギルの歌が糸となってこの世界をつないでいるような印象を受けました。

ミュージシャンになる前はノルウェーでただひとりのプロの特殊メイクアップ・アーティストだった意外な過去と、それゆえのハリウッドへの憧憬、10代のころから好きだったという美人の奥さんと2匹の愛犬への愛情とかいろいろ話をするなかで、永遠の少年の遊び心のようなものと同時に、大人の落ち着きと芯の強さを感じさせ、彼の書く歌詞がいずれもシンプルでストレートな理由がよく理解できました。ちょうどツアーにあわせてリリースされた「find a way」の歌詞にはこうあります。

「道をみつけるんだ/森をまた抜けて/夜を捨てて/道をみつけるんだ/木のうえ、雲のした/月は明るく輝いている」

エギルもガレスもそれぞれお互いの道をみつけたんでしょう。エギルはニュー・アルバムが間もなく完成し、秋にリリース予定とのこと。ガレスもニュー・アルバムを作って、戻ってきたいと言っていました(ヴァシュティ・バニアンが新作を作っていてそれに参加しているみたいで、そっちのほうが早くできそうなので、彼女のツアーで日本に戻ってきそうな予感…)。

改めて、このツアーに関わってくださったありとあらゆるみなさま、すべてのお客様に深く感謝いたします。

ぼくはこのツアーがおわってほんとうに疲れきってしまい、「もうツアーはやらない」と書きましたが、あれは嘘だったみたいです。次はタマス・ウェルズ。6月に会いましょう。

*写真は三田村亮さんにお借りしました。

(さらに…)

egil olsen / Gareth Dicksonツアー終了のご報告

ご報告が遅くなりましたが、egil olsen / Gareth Dickson Japan Tour 2013、全公演を無事に終了いたしました。

各公演にお越しいただいたすべてのお客様、ツアーに関わっていただいたすべての方々に感謝いたします。

ツアー後記もいずれ書くつもりですが、いまはこうして感謝のみを記したいと思います。

ほんとうにありがとうございました。