Archive for the ‘disc review’ Category
猛暑を冷ますそよ風ヴォイス:Ólöf Arnaldsニュー・アルバム

すでにpitchforkで取り上げられ、ビョークとのデュエットが話題になっている1980年生まれのアイスランドの女性シンガー・ソングライターÓlöf Arnalds。
ことしのSXSWでももっとも印象的なパフォーマンスをみせたアーティストに挙げられ、9/14にはいよいよOne Little Indianより2ndアルバムをリリース予定ということで、ブレイクが期待されます。p*disからリリースしたÓlafur Arnaldsと名前が似ていてややこしいですが、もちろん別人です。
彼女はムームの元ツアー・メンバーでもあり、他のアイスランドのバンドと多数共演経験があります。こんどの2ndアルバム『Innundir Skinni』は前作でもプロデュースを手がけたシガー・ロスのKjartan Sveinssonと、ピアニストのDavíð Þór Jónssonがプロデュースを手がけ、ビョークをはじめ、Skúli Sverrissonや、AmiinaのMaría Huld Markan Sigfúsdóttirなど、レイキャヴィック・コミュニティーの面々の協力を得て完成させられました。
とはいえ、アルバムの核となるのはアコースティック・ギターやバンジョーの弾き語りによる彼女の驚くべき歌声。話題性は抜群でしょうが、内容はとても内省的。ビョークの存在があまりにも大きいですが、Vashti BunyanやJudee Sillといったフォーク・シンガーの系譜に位置すると言えるでしょう。個人的にはビョークとのデュエット「Surrender」よりもタイトル・トラックで、1stシングルでもある「Innundir Skinni」のアコギ弾き語りにグッときました。
Ólöf Arnalds – Innundir Skinni (official video)
Ólöf Arnalds – Surrender (with Björk)
ちなみに1stシングル「Innundir Skinni」のB面ではアーサー・ラッセルの「Close My Eyes」をカバーしててめちゃくすばらしいのですが、こんどリリースされる2ndシングル「Surrender」では「Sukiyaki」をカバーしているみたいです。
Ólöf Arnalds – Close My Eyes (Arthur Russell cover)
2010年上半期オススメの歌声

2010年が半分終わったということにおどろきを隠せません・・・。上半期ベストを挙げるのも面倒なので、このブログで取り上げてこなかったアーティストを紹介することでそのかわりとさせていただきます。
米ミネアポリスのPeter Millerによるソロ・プロジェクトWe Are The Willows。今年の3月に1stアルバム『A Collection of Sounds and Something Like the Plague』をリリースしました。このひともまた「スペシャル・ヴォイス」の持ち主です。元保育園の先生という24歳。
正直なところ、上の画像からは想像もできないような美声です(24歳というのも信じられませんが)。むしろ天賦の才能とはなにかとひきかえに得られるもの。彼は人も羨むようなルックスを持って生まれることはできなかったですが、そのかわりに神様は彼に特別な歌声を授けました。
フリーダウンロードできたEP『A Family. A Tree. EP.』は本当にすばらしい作品でした。そのなかの「Isabel’s Song」を聴いたとき、たとえば、Bright Eyesの「Perfect Sonnet」をはじめて聴いたときと同様の衝撃を受けた記憶があります。当時勤務していた保育園の子どもたちの声のフィールドレコーディングをバックに奏でられる荒削りだけどやさしく響く美しい歌声。残念ながらこの青年がBright Eyesのように注目を集めることはないでしょう。でも、ぼくは見守りつづけたいと思います。なぜなら彼は歌いつづけないといけないのですから。

期待が大きすぎたためか、1stアルバム『A Collection of Sounds and Something Like the Plague』は、正直、EPほどの作品とは言いがたいものだったと思います。統一感という面では個人的に不満が残る内容ですが、まだまだ若いので今後の成長に期待したいと思います。
ちなみに彼はRed Fox Grey Foxというバンドのヴォーカリストでもあります。このバンドは過去に1枚アルバムをリリースしていますが、シンガー・ソングライターにとって受難の時代ですので、むしろそっちのほうがブレイクの可能性はあるのではないかと。いや、ないか。
We Are The Willows – Isabel’s Song (live)
Sam Amidonニュー・アルバム『I See the Sign』

DovemanことThomas BartlettやNico Muhlyとの交流でおなじみのシンガー・ソングライターSam Amidonの4枚目のソロ・アルバム。前作『All is Well』から3年ぶりのリリースですが、彼らなかよしトリオをとりまく状況はこの3年でかなり違ったものとなりました。
とくにニコはBjork、Rufus Wainwright、Antony & the Johnsons、Grizzly Bear、そしてJonsiなど重要なアーティストの作品に参加して一躍世界でもっとも注目を集める作曲家に。
サムの状況も随分と変わったと思います。当時Bedroom Communityの流通を行っていましたけど、はっきり言って、サムの前作『All is Well』なんてほとんどのお店が見向きもしませんでしたから。
さて、待望の新作『I See the Sign』。Dovemanの『The Conformist』に並びうるすばらしい作品です。トーマスは不参加ですが、ニコ・ミューリーがピアノなどでほとんどの曲に参加しています。また、ニコがアレンジとコンダクターを務めたオーケストラ・アンサンブルの導入が前作からの進化でしょう。
持ち前のすばらしいソングライティングをよりリッチにするようなアレンジ。かといってゴージャスに振れるのではなく、彼の素朴さとナチュラルさをより魅力的に聴かせるアレンジです。サムの無感情なヴォーカルは決して非凡なものとは言えないかもれしれませんが、飽きさせることのないなにかを持っている気がします。
Sam Amidon – How come that Blood
彼のバンドキャンプで全曲試聴できるので、ぜひチェックしてみてください。R.Kellyの「Relief」のカバーとかたまりません。
ちなみに、Valgeir Sigurðssonがプロデュースを手がけるほか、楽器もいろいろ演奏しています。ほかにもBen Frost、Beth Ortonらも参加しています。
Best album of the year – Doveman 『The Conformist』

ひとの年間ベストなんておもしろいものでもないですが、風物詩として読み流していただければと思います。
いきなりぶっちゃけますと、今回選んだこの作品はliricoからライセンス・リリースするつもりのものでした。けど、アーティストがライセンスには全く興味がないということで、実はいまも返事を待っているんですが、2ヶ月も待ったからもういいだろう、と。諦める意味でもここに書こうと思ったわけです。
というわけでDovemanことThomas Bartlettの3rdアルバム『The Conformist』が私的ベスト・アルバム・オブ・ジ・イヤーでございます。弊ブログの熱心な読者(なんていないと思いますが)であれば、過去に書いたことがあるので、ピンと来る名前ではないでしょうか。なにせ名前がダサいので。ハト人間ですよ(つまり、いま話題の「鳥人(とりじん)」ですね)。
オルタナ・フォーク注目のシンガー・ソングライターSam Amidonや、4ADからリリースするThe Nationalのメンバーのうち、4/5がレギュラーで参加したり、シガー・ロスのヨンシー・ソロのプロデュースを手がけ、いまもっとも熱いプロデューサーであるNico Muhlyと親しかったり、本作には他にもNorah Jones、Martha Wainwright、Beth Orton、Glen Hansard (Swell Season)などかなりの大物たちがバックアップしていたりして、なにかと周りを固めるメンツがものすごいのです。プロデューサーもこれまでの作品同様、グラミー賞受賞経験のあるPatrick Dillettがてがけていて、とにかくハイ・クオリティー。
けど、やはり何よりすごいのはThomas Bartlettの個性です。専門的に学んだクラシック・ピアノは淡々としていながらエモーショナルで、およそ感情というものをすべて表現しているかのようであり、かなしみをたたえたウィスパー・ヴォイスはほんとうに静かでメランコリックですが、芯の強さを感じさせます。それはDakota SuiteのChris HoosonやScott Matthewが歌うサッドソングと同様の深みのある美しさを持っているように思います。
特にNIco Muhlyがセレステで参加し、鮮やかなストリングスの渦に巻き込まれるようにして彼が歌い上げる「Tigers」は個人的に今年もっとも心動かされた一曲です。
そして歌詞もほんとうにすばらしい。
そして、物事はおわる/そして、あなたは別れをつげる/ぼくは座って/このララバイを口ずさむ/あなたはぼくのほうを向き/なにを歌ってるのと尋ねる/けど、ぼくが答える前に/あなたはドアの向こう/ぼくは呼びかける/けど、あなたにぼくの声は届かない/ぼくはあなたの名前を叫ぶとき/ぼくが倒れるとき/天使が急いでやって来る
Tamas Wells、Scott Matthew、Chris Garneau。ぼくとしてはこの次にリリースされるべきなのはまさにこの人しかいないと思っていた。残念ながらそれはかないそうにないけど。たとえばNorah Jonesが参加している「Aftermath」なんて、彼女がリードヴォーカルじゃないだけで、曲としては彼女のアルバムに入っていてもおかしくないぐらいの曲だから・・・Dovemanはもっともっと注目されていいと思います。あと、今回はジャケットもまともですしね。
Doveman – Tigers
あと、裏ベストトラックはDovemanの「Almost Paradise」のカバーです。リリースは去年だけど、今年一番聴いたかも。
最近気になるおんなのこ 〜Scary Mansionニュー・アルバム

気づいたら12月で、クリス・ガノの来日はもう来月のことなのかと驚愕しています。
そんなクリスとも友人で、ニューヨークではライヴで共演しているLeah Hayes率いるScary Mansionのニュー・アルバム『Make Me Cry』がフランスのTalitresよりリリースされました。

Leah HayesはTV on The Radioの曲にフィ−チャーされたり、イラストレーターとしてニューヨーク・タイムズにイラストを書くなど、多方面で活躍。元FugueのドラマーBen Shapiroと、ベーシストBradley Banksによるトリオですが、男たちは完全にLeahの引き立て役。ちなみに彼女の双子の姉妹であるシンガーソングライターのVannesa Hayesがライヴではメンバーに加わったりもします。美人姉妹によるツイン・ヴォーカルはとても絵になります。
Scary Mansion – Mighty / New Hampshire
Scary Mansion – Unwise (live @ Le Poisson Rouge)
上はニュー・アルバムに収録されている「Mighty」の弾き語り映像。下が今年の夏のニューヨークでのライヴ映像です。サンダースティックという3弦の弦楽器がとても特徴的ですが、サンダースティックをギターのようにかき鳴らすダイナミックなサウンドはとてもかっこいいです。Leahのハスキー・ヴォイスはとてもクールでなんだかカリスマ性も持ち合わせています。今後要注目のバンドでしょう。
Scary Mansion myspace
p*dis : Scary Mansion / Make Me Cry 詳細ページ
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