hue and cry

Radical Face & miaou Japan Tour 2012 後記

今回のツアーをふりかえる前に、まずはぼくとラディカル・フェイスとのなれそめから書いてみようと思います。

ぼくがラディカル・フェイスを知ったのは2006年の後半のこと。ほどなくして彼のオフィシャル・デビュー・アルバム『Ghost』がMorr Musicからリリースされると知り、タマス・ウェルズにつづくアーティストとしてラディカル・フェイスを迎え入れることを熱望し、すぐにライセンスのオファーを出しました。しかし、当時、交渉の難しさには定評があったMorr Musicとの交渉はすぐに決裂。そして、『Ghost』は世に出て、ぼくが想像していた通り、非常に高い評価を得たのです。

ベンとの交流はその後もつづきます。彼の幻のアルバム『Junkyard Chandelier』(2003年作)の再発をぼくらは話しあっていたのです。ラディカル・フェイスの「アーリー・ワークス」のお蔵出しはとても重要なプロジェクトだと信じていましたが、結果的にそのプロジェクトは頓挫してしまいました。いくつかの初期音源はいまでは彼のウェブサイトでフリー・ダウンロードできますが、『Junkyard Chandelier』はいまだに日の目を見ないまま・・・と思いきや、彼のオフィシャルサイトのフォーラムでフリー・ダウンロードできるのでぜひ探してみてください。

その後、hueのコンピレーション『Once a hue, always a hue』(2007年12月発売)に『Ghost』のアウトテイク「If You Come Back to Haunt Me」を提供してもらったこともありましたが、彼とはいつかいっしょにしごとをするんだと信じていました。

『Ghost』の次のアルバムが出たときはかならずリリースする、と思っていたものの、これが完成しそうでなかなか完成しなかったんですよね。当初、Morr Musicから出る予定だった2ndアルバム『The Family Tree: The Roots』は結局、セルフリリースとなったのはご存知だと思います。それを「後退」だと認めつつも、レーベルという既存のビジネス・システムにとらわれることのない自由さを尊重した彼の選択は、Morr Musicという名門レーベルの影響力を捨て去ることでもあり、きっと勇気のいる選択だったことでしょう。

Morr Musicの規模とは比べものにならないとはいえ、Liricoもまたひとつの商業的なレーベルだと言えます。とはいえ、結果的にぼくらの理念を理解してくれたうえで、ライセンスを許可してくれて、最終的にはほとんど共同リリースに近いかたちでリリースまでいっしょに動けたことは、ぼくにとってはこのうえない喜びです。

話は前後しますが、『The Roots』のライセンスの交渉がはじまる数ヶ月ほど前のこと。miaouから新作に収録する曲のヴォーカルをベン・クーパーに頼みたいという申し出があり、その橋渡しをおこないました。miaouの曲にベン・クーパーが歌をいれて生まれたのが「Lost Souls」という曲です。『The Roots』の交渉時(2011年4月)にはその曲はまだ完成していませんでしたが、そのときにはすでにラディカル・フェイスとmiaouでジャパン・ツアーをおこなうことを頭のなかで思い描いていましたし、実際に交渉の条件に含まれていました。

前置きが長くなりましたが、今回のツアーは「Lost Souls」をはじまりとして、miaouという日本でもっとも誠実なバンドと、ラディカル・フェイスというアメリカでもっとも純粋なアーティストがともに音楽を奏でる奇跡的な一週間となりました。

ツアーがはじまる前日の夜。スタジオで「Lost Souls」の練習をおこないました。そこではじめて会い、まともな会話もほとんどないまま合わせたその曲はまぎれもない「Lost Souls」でした。音楽家ってすごい。わずか1時間足らずの練習にも関わらず、完成度の高い自然な演奏に仕上がったことにはほんとうに驚きました。それぞれみんないろいろな楽器を操れるマルチ奏者である点や、ものしずかな点など、このふたつのバンドにはもともと共通点がたくさんあったのでしょうね。集客のことはまだ予想できなかったですが、この時点でぼくは内容面での成功を確信していました。

無愛想さと人なつこさをあわせもつ「ベア」ことベン・クーパーakaラディカル・フェイス。最年少だけど誰よりも大人でまじめなジェレマイア・ジョンソンと、逆に最年長なのに少年の心を忘れないスイーツ大好きなヨーヨーの達人ジャック・リンカをサポートに加えたこの素敵なヒゲのトリオはとてもバランスがとれていたと思います。「クワイエット・アメリカンズ」を自称する彼らはほんとうに礼儀正しく、まったく手がかからないナイスガイたち。なんども書いているし、なんどでも書きますが、音楽とおなじぐらい人柄がたいせつなのです。

5都市6公演。これくらいの長さのツアーは過去になんども経験していましたが、車でのツアーははじめてのことで想像していたよりもずっと過酷でした。ラディカル・フェイスの3人はわりと慣れている様子だったので、そういうところからもアメリカのバンドの実力が垣間見えました。

アーティストとはいつもいい関係を築きながらツアーできていましたが、やはりツアーに不安はつきもの。あらゆる不安を抱え込むのが常でしたが、今回いっしょにまわったmiaouの存在のおかげでいつもよりは安心感があった気がします。あくまでぼくはツアー・マネージャーだったので、適度な距離感でみんなをバックアップしつつも、「仲間」として、苦楽をともにしながら、互いの信頼感が日に日に大きくなっていくのが楽しくてたまりませんでした。

アルバム『The Family Tree: The Roots』のリリース・ツアーとして、昨年秋のアメリカ・ツアーと2月のヨーロッパ・ツアーを経て、さいごに訪れることになったのが日本。アメリカもヨーロッパも、日本に比べると環境面でもスケジュール面でもずっと過酷なツアーを経験しているだけに余裕すら感じさせました。

さすがに初日の新潟公演は固かったものの、2008年の前回の来日公演はラップトップを交えたソロでのギター弾き語りだったわけで、そのときの印象を一掃するバンド・サウンドは圧巻のひとこと。初日は轟音セット一辺倒で、音響的なバランスの悪さが多少気になりましたが、その後の公演においては、会場の制約ゆえに静かめのセットも織り交ぜていくことでその課題も改善されていきました。毎回セットを変えていくラディカル・フェイス。「会場が変わればサウンドも変わるから、ぼくは実際その日会場にいってからそこに合うベストのセットを考えるんだ。それにいつもおなじセットだと飽きちゃうからね」と、ベン・クーパー。

記念すべきワールド・プレミアとなった新潟公演の「Lost Souls」は、個人的にサウンドチェック時の演奏にはやや劣っていたと思いますが、それでもこの曲がマスターピースであることを証明しました。ツアーが進むにつれて楽曲が成長を遂げていくことは過去に何度も経験してきましたが、この曲に関しては、音楽が、作品が、“生き物”であることを改めて実感しました。あらかじめ期限が決められていたため、バンドもこの曲を演奏することを心底楽しんでいることが伝わってくるんですよね。

・・・と、ここまで書いてきたところで、各公演ごとに書いていっては永遠におわりそうにない気がしたので、ここからは東京公演に絞って書いていきますね。渋谷O-nestをツアー・ファイナルの会場としてブッキングしたとき、ぼくの頭のなかにはもう一公演、より小さな会場でより親密な雰囲気のライヴを用意したいという考えがあり、結果的に池袋にあるミュージック・オルグをブッキングしました。

4日間の地方公演を終え、2日間のオフを経ておこなわれた3/23のミュージック・オルグ公演。この日はラディカル・フェイスのワンマンでした。いつものキーボードではなく、この日のみヤマハのアップライト・ピアノを用いたアコースティック・セット。80㎡にも満たない小さな会場はバンドと観客の距離は30cmくらいだったでしょうか(苦笑)窮屈な思いをさせてしまってすみませんでした・・・!

ロングセットということで事前に案内していましたが、「2時間分くらいならレパートリーがあるから大丈夫だよ」とのことだったので内容については彼らに任せていましたが、なんとジャックがオープニングアクトとしてギターの弾き語りをするとのこと。かわいらしい蝶ネクタイまでして張り切っていましたが、はじめて聴いた彼の曲はブルースに近いもので、意外にも渋い美声。数曲と聴いていましたが、4曲演奏していたところでベンが登場・・・したのですがそのままトイレにいき(苦笑)、結局ジャックは5曲を演奏。ちなみにベンはラディカル・フェイスの終了後もそのままトイレに直行。こんな自由なアーティストははじめてですよ。

「日本語が話せなくてごめんなさい。もし英語がわからなかったら、ぼくの曲はぜんぶ悲しい曲だから」とライヴの最初のMCでベンはいつもそう話していたと思います。「ぼくはハッピー・ソングの書き方を知らないんだ」とある日そう言ったベンにぼくは言いました。「気が合うね、ぼくにはサッド・ソングしか必要じゃないんだ」と返したと思います。。

今回のツアーでは初めて演奏する「Along the Road」でスタート。新曲「The Mute」、そして群馬公演でのアンコールでも披露したシンニード・オコナーの「Nothing Compared 2U」のカヴァーとベンのギター弾き語りが続きます。それ以前のセットリストとは明らかに違う流れに驚かされました。

4曲目の「Wrapped in Piano Strings」からはジェレマイアとジャックが加わり、3人でライヴは進んでいきます。彼らのライヴは演奏以外の部分が冗長すぎるのが短所(好意的に見たら長所ではあるかもしれない)で、セットリストをベンの手帳に書いてはいるものの、他のふたりとそれを共有していないばかりか、ベンがセットリストを覚えていないため、いちいちそれを確認し合ったりしてなかなか次の曲に進まない・・・さらに1曲ごとに曲の解説をしてくれるですが、3人のやりとりがたまにコントのようになってしまったりしていました。この日はワンマン・ショーのせいなのか、ロングセットのせいなのか、親密な会場の雰囲気ゆえなのか、持ち前のグダグダさにさらに磨きがかかっていた気がします・・・(苦笑)

個人的に「Glory」は披露されたすべての公演でハイライトとなっていましたが、この日の「Glory」は格別でした。原曲とは違うライヴ・アレンジはベンの歌声がタマス・ウェルズたちと同様にスペシャルなものであることを証明してくれました。そしてタマスの歌声がぼくの心を鎮め、やさしく包み込んでくれるのと比べると、ベンの歌声はぼくの感情を強く揺さぶるのです。「Glory」のラストのファルセット・パートはベンの歌詞を借りるなら「Gold」でした。

そして、そこから「Welcome Home」の大団円。この日は今回のツアーではじめて大合唱が起こりました。最高に幸福な時間。けど、それ以上に美しい時間が次の日に待っていました。

ベンたちが来日してからすでに9日がすぎた3/24。ついに最後の日がやってきました。ツアー・ファイナルはいつだって特別なもの。アーティストが張り切りすぎて気持ちが空回りするケースもなくはないし、疲労がパフォーマンスを下げるケースもありますが、ぼくの経験上では、ツアー・ファイナルがベストになることが多いのです。今回は特にそうでした。

オープニング・アクトにはニュー・アルバム『UNI 8』をリリースしたばかりの大阪のガールズ・バンドwater fai。miaouとはレーベルメイトになったばかりです。つまりLiricoの親戚。今回のようにファミリーだけでブッキングしたのはほぼ初めてのことでしたが、和気あいあいとした雰囲気がオーディエンスのみなさんにも伝わったとしたらうれしいです。

water faiは、3-4年前に東京で頻繁にライヴを行いはじめて以来何度も観ていますが、近年の覚醒にはほんとうに驚かされます。残念ながらこの日は2曲ほどしか観れませんでしたが、今後その存在感をますます増していくことでしょう。

そして、いよいよmiaouの出番です。ラディカル・フェイスを観に来られた方々にとっては、もしかしたらmiaouのライヴ初体験だったかもしれませんが、まずは機材の多さに驚かれたかもしれませんね。ステージ上にはヴィブラフォン、グロッケンシュピール、シンセ、ラップトップなどが壁を作るように立ち並び、4人のメンバーが代わる代わる楽器を持ち替えて演奏します。全員が複数の楽器演奏の役割を担わされ、しかもそれを高次元のレヴェルでこなしながら美しいアンサンブルを作り上げていく彼らの存在は、この日本においても希有な才能だとぼくは思います。

気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、この日、miaouは昨年リリースしたアルバム『The day will come before long』を最初から順番に演奏していきました。もちろんepic45のベン・ホルトンがヴォーカルを務めた「Endings」は演奏していませんし、ラディカル・フェイスが参加した「Lost Souls」は演出上、ラストに配置せざるを得ませんでしたが、今回の演奏はまさに”miaou plays 『The day will come before long』”。あの美しい作品をライヴで再現するのはとても困難を極めることだったと思います。ともすれば「Lost Souls」に話題がいきがちだったかもしれませんが、彼らの強い意思と気迫が伝わってくる演奏は、ぼくがいままで観たなかでもベストだったと言えるでしょう。本人たちもいまが全盛期と認めるその自信・・・結成10年目でそう断言できる彼らの芯の強さを感じさせるほんとうにすばらしいライヴでした。

作品とライヴはもちろん別物ですが、それでもなお世界観を伝えることを真剣にやりきろうとする彼らの意識の高さや妥協のない向上心にはともにツアーしてきて脱帽するばかりでしたし、それにはラディカル・フェイスのみんなも同意し、リスペクトしていました。

ラスト直前の「Keep Drifting My Heart」。舞台袖ではクライマックスで激しく身体を揺らすベンとジャック。反対側の舞台袖にはジェレマイアの姿が見えました。曲が終わり、miaouの浜崎さんがラディカル・フェイスの名を呼びます。最後の「Lost Souls」の時間です。

観客席にまで漂う緊張感。ゴーストのささやきのようなベンの歌声に導かれた長いイントロ。「gettin’ lost is how we find our way(道に迷うことはじぶんの道を見つけること)」という歌詞を表現したかのように、ゆるやかに流れていくメロディー・ライン。そして、ゴーストのささやきから叫び声へと変わっていく終盤のクライマックスへ。miaouの4人とラディカル・フェイスの3人の総勢7人による演奏はアンサンブルということばを越えて、それ以上の調和をみせてくれました。

「You say we’re all lost souls, so we’re never alone.(ぼくらはみんな失われた魂. そうさ, ぼくらはひとりじゃないんだ)」というリフレイン。決して平穏な生き方をしてはいないと思われるベン・クーパーという稀代のアーティストの生き方そのものが表現されたような歌詞。その結末にふさわしいこの美しいことばは昨年の3月以降に書かれたものです。そこに必要以上に意味を与えるまでもないかもしれませんが、「音楽は語られなかった悲しみのためのものだ」という、かの詩人のことばのように、また、浜崎さんが「この曲をここにいるみなさんに捧げます」と話していたように、「Lost Souls」はぼくらすべてのひとたちのための歌です。そして、この曲はいま、このタイミングでたった一度だけ奏でられるべきものだと思っていましたし、1ヶ月たったいまもぼくのその思いは変わりません。もし次やるのだとしたら、また別の曲をいっしょに作って、それを演奏すればいいんです。それでいい気がします。この名曲が生まれるはじまりから、こうして演奏されるまで、常にいちばん近くいれたことはぼくの人生の宝だと言えるでしょう。

つづいてラディカル・フェイス。セットリストでは「A Pound of Flesh」でのスタートの予定でしたが、アルバム『The Family Tree: The Roots』の1曲目「Names」のギター弾き語りからはじまりました。もちろん今回のツアーでは初披露。そのままメドレーで突入した「A Pound of Flesh」では、特にディストーションをかき鳴らすギターの轟音のクオリティーがすばらしく、さすがクリス・ガノをして「アメリカに連れて帰りたい」と言わしめたPAさんだなと思いました。また、この日ベンは歌詞を歌うためのマイクと、より深めにリヴァーブをかけたコーラス用のマイクというダブル・マイクで挑みましたが、まさにラディカル・フェイスの多彩なヴォーカル・ワークの本領発揮。とんでもないことになっていました。

1st『Ghost』で1、2を争う名曲「Wrapped in Piano Strings」から、轟音セットを象徴する「Black Eyes」はフル・パワーで。会場によってはそのポテンシャルを存分に発揮できず、おそらくみんな多少ストレスを感じていたのだと思いますが、この日はそんな足かせから解き放たれて活き活きとした演奏を聴かせていました。

しっとりとした「Moon Is Down」を挟んで「Doorways」へ。ライヴを聴いたおかげでよりその曲のことが好きになるというパターンがツアーごとにありますが、ラディカル・フェイスの場合、この曲がそのパターンでした。「こどもの頃にかつて信じていたものについての曲」とベンは説明していましたが、「I believed that stars are wishes. I believed…」というフレーズがつづくこの曲の歌詞は個人的にベン・クーパーが書いたもののなかでももっとも好きなものです。音源とはずいぶん違うラウドなアレンジも秀逸でした。

「Winter Is Coming」はジャックのいちばんの見せ場。MCではいつも「この曲はジャックががんばります」とベンが説明、そして「もし失敗したらみんなでブーイングしてやろうぜ」っていうパターンばかりでしたが、この日のMCでは「成功したら”ベリー・ハイファイヴ”してやるよ」というまさかの逆パターン。「ベリー・ハイファイヴ」ってなんのことかわかっていませんでしたが、すばらしいドラム演奏で応えてくれたジャックとベンがそのクマのようなおなかを出して、ぶつけ合って讃え合いました(ベリーはベリー・ダンスの「belly」でした)。この日いちばんウケた“ラディカル・コント”はこれでしょうね。。。

つづく「Always Gold」は個人的にラディカル・フェイスの数ある曲のなかでもさいこうだと思っている名曲。家を出ていった弟と、一方で家にいつづける兄の物語はアルバムの核とも言える曲で、今回のツアーではどの公演でも終盤の要所に配置されていました。インタールードではジェレマイアがギターのトレモロアームを使って召還したゴーストのささやきが印象的。これは「Severus and Stone」(「双子の兄弟が死んだの見た少年についての歌」とベンの談)でもジェレマイアは同様に行っていましたが、いま思えば、もしかしたら「Always Gold」では、出て行った弟の死を暗示していたのかもしれないですね。こんどベンに訊いてみよう。

本編ラストは定番の「Welcome Home」。ベンがmiaouのみんなをステージに迎え入れます。miaouはコーラスとハンドクラップ、そして足踏みを担当。「サウンドチェックで1回練習しただけだからどうなるかわからないけど」とベン。そして、観客のみんなにもコーラスをお願いして、実際に演奏に入る前にみんなで練習をしました。「ジャック、どう思う?」とベンが振ると、ジャックは「もっと!」と。「Be Americans(アメリカ人になれ!)」とも言ってましたね。

ラディカル・フェイスとmiaou。長いツアーの終わり、「Lost Souls」とはまた違ったクライマックスはまさに大団円でした。この曲はすばらしい映像が残っているのでぜひご覧いただきたいですが、バンドと観客がことば以上の意味でひとつになっていたあの会場の雰囲気はほんとうに最高!

幸福の時間はいずれおわりを迎えます。アンコール1曲目は「Glory」。前日演奏していた新曲「The Mute」かどちらかに決めるよとベンは言っていましたが、この曲が選ばれました。前日同様、今回のツアーでも上位に入るほどの魔法に満ちた瞬間です。

そして、ラストはディズニー・アニメの「ロビンフッド」のカバー曲のメドレーで終了。ジェレマイアとジャックのパーカッション隊が客席まで乱入して暴れ回ります。「golly, what a day! (あら、なんて日なの!)」という楽しすぎるフィナーレは愛と笑いだらけ。ここ数年、ネット上で他のアーティストのライヴのいい評判を見たりすると、それに対抗心を抱いたりするようなじつに厄介な時期がつづいていて、思い詰めたような日々がつづいていましたが、今回のライヴはそんないろいろな葛藤を一掃する会心の内容でした。あの場にいたすべてのひとに楽しんでもらえた自信がありますし、あの至福の場を用意できたことをぼくはずっと誇りに思いつづけることでしょうね。

最後に。ぼくはmiaouもラディカル・フェイスも舞台袖で観ました。モニタの音と客席のスピーカーでは厳密には違う音作りになるため、観客席のほうが音は格段にいいはずでしたが、ぼくはバンドのみんなとともに舞台袖で見守るほうを選びました。ともに過ごした長いツアーのおわりにぼくがいるべき場所は、そこしか考えられなかったから。また、そこにいたせいで「Welcome Home」のときに彼らはサプライズでぼくをステージに上げようとしていたのを全力で拒否したのですが、彼らとともに過ごしてきて、彼らをリスペクトしているからこそのことでした。ステージはアーティストのものです。ぼくなんかが気軽に立つべきじゃないんですよ。

ラディカル・フェイスがまた来日することがあるかどうかはわかりません。また呼びます、とここで簡単に約束できる程度の軽い気持ちで今回のツアーをおこなったわけではありません。なので、今回もし見逃した方は後悔して次回来日という奇跡があることを信じていてください。そして、今回お越しいただいた方は、この幸福な記憶をいつまでも持ちつづけていてもらえればと思います。みなさんへの感謝の気持ちは簡単にことばにできるようなものではありません。とりあえず、次のアルバムは2013年中にリリースされる予定ですので、みんなでそれを待ちましょうか。別れぎわ、ベンに歌詞を引用して伝えました。「You are always gold to me」と。新しい宝石を待っていますよ。

さて、今回のツアーに関わっていただいたみなさまへの感謝の思いを綴って、このツアー後記を終えたいと思います。ほんとうにどうもありがとうございました!!

*O-nestのライヴ中の写真は三田村亮さんにお借りしました。

以下、全公演のセットリストです。


[SET LIST]

3月17日(土)at 新潟 gt.moo gallery

01. A Pound of Flesh
02. Ghost Towns
03. Wrapped in Piano Strings
04. Black Eyes
05. Doorways
06. Severus and Stone
07. Winter Is Coming
08. Welcome Home

encore
Always Gold

3月18日(日)at 京都 OIL

01. Wrapped in Piano Strings
02. Ghost Towns
03. Moon Is Down
04. Doorways
05. Winter Is Coming
06. Severus and Stone
07. Homesick
08. Always Gold
09. Glory
10. Welcome Home

encore
01. Family Portrait
02. Not in Nottingham 〜 Oo-De-Lally

3月19日(月)at 名古屋 K.D.Japon

01. Wrapped in Piano Strings
02. Moon Is Down
03. Black Eyes
04. Doorways
05. A Pound of Flesh
06. Homesick
07. Severus and Stone
08. Ghost Towns
09. Winter Is Coming
10. Welcome Home

encore
01. Glory
02. Not in Nottingham 〜 Oo-De-Lally

3月20日(火)at 桐生 Block

01. Wrapped the Piano Strings
02. Ghost Towns
03. Doorways
04. Moon Is Down
05. Black Eyes
06. A Pound of Flesh
07. Homesick
08. Severus and Stone
09. Winter Is Coming
10. Always Gold
11. Welcome Home

encore
01. Nothing Compared 2U (Sinead O’Connor cover)
02. Not in Nottingham 〜 Oo-De-Lally

3月23日(金)at 池袋 MUSIC.ORG

01. Along the Road
02. The Mute (new song)
03. Nothing Compared 2U (Sinead O’Connor cover)
04. Wrapped in Piano Strings
05. Black Eyes
06. Doorways
07. Ghost Towns
08. Homesick
09. Severus and Stone
10. Always Gold
11. Moon Is Down
12. Winter Is Coming
13. Glory
14. Welcome Home

encore
01. Bishop’s Song
02. Not in Nottingham 〜 Oo-De-Lally

3月24日(土)at 渋谷O-nest

01. Names 〜 A Pound of Flesh
02. Wrapped in Piano Strings
03. Black Eyes
04. Moon Is Down
05. Doorways
06. Ghost Towns
07. Severus and Stone
08. Winter Is Coming
09. Always Gold
10. Welcome Home

encore
01. Glory
02. Not in Nottingham 〜 Oo-De-Lally

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