hue and cry

Lirico / p*disニュー・リリース:Peter Broderick『http://www.itstartshear.com』詳細

すこし遅くなってしまいましたが、Peter Broderick新作『http://www.itstartshear.com』のことについて書きたいと思います。

おそらく、Liricoが新たにリリースするアーティストのなかでは、リリース時点においてはいままでいちばん名前が知られていると思います。ポートランド出身ベルリン在住の25歳の音楽家Peter Broderick。Efterklangのサポートメンバーとして最初に注目を集め、その後、ソロ作品や多くのコラボや映画、ダンス作品のスコアを手がけてきて、実際、p*disでも彼の作品はほとんどすべて流通を行ってきました。

今回、ライセンス・リリースするのは2008年の『Home』以来、3年半ぶりとなる2枚目のヴォーカル・アルバムです。詳細は以下のリンク先をご覧ください。

詳細:http://www.inpartmaint.com/lirico/lirico_title/LIIP-1514.html

上記のように、これまでp*disでずっとサポートしてきたため、今回、品番はLiricoの「LIIP」品番で、リリースもとのレーベルはLirico / p*disという扱いにしていますが、いずれにせよ、担当はおなじなのでわりとどうでもいいことですね。むしろわざわざ“Liricoのほう”に迎え入れたのは作品の美しさがふさわしいと思ったからです。

昨年、ともに来日したベルリンのピアニストNils Frahmがプロデュース/レコーディング/ミックス/マスタリングまですべてを担当し、Nilsのスタジオで二人三脚で製作されたこの作品は、モダン・クラシカル路線と、フォーク路線、彼がこれまで作品を作る際にあえてみずからに課していたあらゆる制約を取払い、彼のすべてがつまったまさに集大成的な作品となりました。

アルバム・タイトルは「http://www.itstartshear.com」。本国のリリース日の2/21以降、このURLにアクセスすれば実際に歌詞やアートワークやテキストなどが参照できるようになる予定です(ウェブはまだ構築中でぼくもまだどのような内容かは知らされていません)。このインターネットを用いたプロジェクトとのタイアップは、いまや日本以外ではマーケットの中心となったデジタル・ダウンロードに対するPeter Broderickなりの意思表明でもあるのです。


Peter Broderick / It Starts Hear

こちらは先行で公開された「It Starts Hear」のミュージック・ヴィデオ。Nils Frahmによるシンセ・ベースに乗せて、皮肉たっぷりのリリックが淡々と語られるポエトリー・リーディング。そして、一方でものすごくメロディックに唱えられるURL。これまでの彼の音楽のファンからすれば、意外に思われるかもしれません。契約上、いまはまだ他のトラックをお聴かせすることはできないのですが、この音楽的挑戦の意味について、アルバムのすべてを聴けば必ずだれもが唸らされることになるでしょう。

美しいピアノとストリングスや、ポートランド魂の宿るフォーキー・ソングから30年以上前に実夫がひそかに作っていた曲のカヴァー、果てはラップ(?)やエレクトロニック・ビートの入った曲まで、とにかくスケールの大きいポップ作品です。

最初にリリースしたソロ・ピアノ作品『Docile』とピアノとストリングスによる『Float』の印象が強かったためか、ぼくはずっと、Peter Broderickのヴォーカル路線は彼の「アナザー・サイド」だと思っていましたが、今回の作品を聴いて、それが大きな勘違いだと気づかされました。彼は高校生のころから歌のある曲を作りつづけてきたわけで、モダン・クラシカルのイメージはまわりが勝手に植えつけたものでしかなく、その枠の大きさはもはやこの音楽家にとって十分ではないのだと思います。


Peter Broderick / Everything I Know | Live at Flèche d’Or, Paris

こちらはアルバムの最後を飾る名曲「Everything I Know」のパリでのライヴ映像。日本でも演奏していましたね。

国内盤にはボーナス・ディスクとして4曲入りEP『/ep』(最初、『Live at Durton』という名前でしたが変更になりました)がついた2枚組スペシャル・エディションです。内容はこのためにレコーディングした、アルバム収録曲の4曲のよりシンプルなセットでのライヴ・ヴァージョン。タイトルでピンときた方。そうです。本編タイトルのURLのうしろに「/ep」をつけてみると・・・ライヴ映像などが観れるようになるみたいですよ。

このエディションは初回生産分500枚限定です。一発録りという性格上、アルバムの本編以上に美しい瞬間もいくつもある4曲です。同じライヴ・レコーディング作品『How They Are』や昨年の来日ライヴに惚れた方はぜひこのエディションを聴いてもらいたいと思います。発売は2/16予定。ぜひチェックしてください!

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