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Liricoニュー・リリース:Tom Adams『Silence』
〜たった3分で人生はかわる〜

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Liricoの2017年3作目のリリースは、ベルリン在住のイギリス人シンガー・ソングライター/作曲家トム・アダムスのデビュー・アルバム『Silence』です。実は2016年のデビューEP『Voyages By Starlight』のときから追いかけていたのですが、このデビュー・アルバムはまさに宝物のような作品になりました。ほんとうに美しいファルセット・ヴォイスはタマス・ウェルズやエギル・オルセンとかよりもずっとソウルフルですが、同様のスペシャルさをもっているとおもいます。

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*詳細はこちらをご覧ください:
http://www.inpartmaint.com/site/20269/

いまはまだ20代なかば〜後半くらいですが、元々はアンビエントやポスト・ロックを作っていた彼が真剣に歌に取り組むようになったのはほんの数年前のこと。そんな彼のターニングポイントは2014年の初夏にはじめて訪れたベルリンに着いたその夜、ニルス・フラームのコンサートでの出来事でした。その日は彼が企画してつくられた世界でひとつの手作りアップライトピアノUna Cordaのお披露目演奏会。ニルスはオーディエンスをステージに招いて演奏させるということをよくやるのですが(かつて東京でのタワーレコード・インストア・ライヴでもそうしていました)、そこで志願したのがイギリスからの旅行者トム・アダムスでした。トムはそこで本作の最後に収録された「Time」を演奏します。マイクスタンドがなかったのでニルス自らがマイクスタンド役を務めました。スケートボードを抱えたTシャツ短パンのカーリーヘアの名もなき青年が突然、世にも美しいファルセット・ヴォイスで歌いはじめたところを想像してみてください。300人のオーディエンスは驚嘆しました。マイクを手にしていたニルスも思わずピアノを連弾しはじめます。演奏終了後、おおきな歓声に包まれるトム。バッグいっぱいに持っていた自主制作のCDは売れに売れたといいます。ニルス・フラームのマネージャーはいまではトム・アダムスのマネージャーでもあります。その演奏をきっかけにレーベルと音楽出版社が決まり、トムは故郷のケンブリッジの田舎町からベルリンへと移住します。「スーザン・ボイル的」と誰かは書いていました。音楽の魔法。たった3分間の演奏でトム・アダムスの人生はおおきくかわりました。

歌への関心を少しずつ強めていっていた彼が、ピアノとエレクトロニクスに歌を絡み合わせた現在の音楽性を手に入れたきっかけは、2015年にア・ウイングド・ヴィクトリー・フォー・ザ・サルンのサポートアクトに抜擢されたことでした。当時、ライヴではピアノを使用せずギターのみのセットだったようですが、このシフトチェンジは英断だったのではないでしょうか。「Come On, Dreamer」「Sparks」「Time」と先行シングルとして公開された3曲はいずれもものすごい名曲。ちかくにニルス・フラームというロールモデルがいること、そして彼の静寂の歌のポテンシャルをおもえば、トム・アダムスの逆シンデレラ・ストーリーはたぶんまだはじまったばかりなのだとおもいます。

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