Velveljin – ABC

RÉCIT
recit11
国内盤CD

1,500円+税

 
Velveljinが、新作EP「ABC」を発表する。パリを拠点とするレーベルRÉCITから発表されるこの作品は、ニューウェーブ、ポストパンクを軸とした簡潔なポップ・ロックである。
タイトル曲「ABC」は、「長い道を降りてきました」という告白のような一文からはじまる。この曲は、山での体験にもとづいて書かれたという。それも頂上を目指していくような垂直的な達成の記録としてのそれではなく、かつて串田孫一らが主宰した雑誌「アルプ」で読むことができたような、内的な考察を含む断片的な記憶としての体験である。直裁的な言葉が、整然と並べられている。山深い雪国で出会う残雪の頃の春の気配に、心が弾まない者はいないだろう。爽快なニューウェーブ風の曲調は、この季節に木々の間から仰ぎ見る、白と青と灰色が混じった空の風景を思い出させるようでもある。

「ドリー・グレー」と「オブ・ブルーム」は、ジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』からの引用で歌詞が書かれている。前者は、グループの初期の自主制作盤や2000年代のポストパンクで聴かれたようなラフでタイトな質感を思い起こさせる。ギターの逆再生からはじまる後者は、素朴で穏やかなブルース/ガレージ・ロック調にまとめられている。しかし同時に、どこかグランジが内包していたような切迫した雰囲気も漂う。

「おはよう」という日本語で歌われている曲は、Velveljinというバンドに対するイメージを変えるものかもしれない。まじめなのか、ふざけているのか、一聴しただけではなんとも判別し難い。そしてさらに、様々なジャンルの音が混ぜこぜになっている。私たちは、この感覚をどこかで知っている。

作品を通して、ザ・スミスやザ・キュアーのようなクラシックなバンドサウンドからの影響、歌詞内容への意識など、バンドの制作に対する変化が感じられる。京都からパリに拠点を移し、パンク、ロック、エレクトロニカ、そして前作「LP」で聴かれたジョン・ケージの哲学に通じるような現代音楽、沈黙を通過した今、バンドがあらゆる経験を「ポップ」の枠組みで表現しはじめている。

■限定100枚(ハンドメイドパッケージ、通し番号つき)