フリー・フォークよりもフリー
宇宙一の即興音楽集団JOMFが奏でる無限のサイケデリア

アメリカ伝統のフォーク/ブルースを斬新に再構築した前作「Flags of Sacred Harp」から早2年、米オレゴン州ポートランドの即興音楽集団ジャッキー・オー・マザーファッカー(以下、JOMF)の最新作が登場。本作「Valley of Fire」は、前作の延長上にありつつも、クラウトロックやクラシックなウエストコースト・ロックのエッセンスを取り入れたまったく新しいオリジナルなアルバム。彼らの持ち味であるカオティックで高度な即興演奏とみずみずしく美しいソングライティングのコントラストの絶妙なバランスが堪能できる内容になっている。このバランスがJOMFが固定概念に捕われない自由な即興演奏を取り入れるフリー・フォーク/アヴァン・ロックシーンの中でも常に頭一つ抜き出ている理由であろう。

本アルバムに参加しているメンバーは、前作とまたがらっと変わり、総勢8名。プロデュースは前作から引き続きJOMFに参加しているアダム・フォークナー(White Rainbow, Yume Bitsu, Devendra Banhart)が担当し、恍惚とするようなサイケデリック・サウンドを作り上げている。また、女性ボーカルには5 Rue ChristineレーベルからアルバムをリリースをしたInca Oreのエヴァ・セイレンズの妖しくも力強い歌声が楽曲に独特のアクセントを加えている。

往年のクラウトロックを彷彿とさせる太いグルーブと覚醒感全開のトラック1から始まり、JOMFの美しいソングライティングが堪能できる歌ものトラック2、ビーチボーイズの”A Day in the Life of a Tree”を味わい深くカバーしたトラック3、そしてロンドンで録音された約20分のライブ音源のトラック4は、パブリック・エネミーの”She Watch Channel Zero”をJOMFのフィルターを通し、まったく新しい解釈で再構築したロングライブセット。日本盤のみのボーナストラックにはトラック1と同じ時に録音された、クラシカルでサイケデリックなジャムセッションを収録。
『Jackie-O Motherfuckerの素晴らしいアルバム「Valley of Fire」は、彼らの作品の中でも僕らの一番のお気に入りと言えるだろう。ある時はさりげなく、ある時は緊迫した女性ボーカルと、浮遊感と雑多感を帯びた白昼夢のようなサウンドは、むせび泣くブルースを奏でるファズヘッドのようにも聞こえる。あるいは、ベルベット・アンダーグラウンドのようなフォーク・サウンドがちりばめられ、魔法のモップでコーティングされている。その分厚いサウンドの名前はValley of Fire、これは怪作だ。』
Byron Coley & Thurston Moore, Arthur Magazine, May 2008

 

※日本盤のみボーナストラック1曲収録
※JOMFのトム・グリーンウッド本人によるアルバム解説