圧倒的。
ラテンジャズとフリージャズが完全に調和した、現代における演奏録音の到達点。

Jeff ParkerやMakaya McCravenをはじめ、現代ジャズシーンにおける重要人物が数多くその名を連ねるシカゴより、またしてもとんでもない作品が生み出された。
2018年に発表された初のリード作””The Other Side of Time””が、Bandcampを中心に世界中の熱心なリスナーの間で話題となったQuin Kirchnerの2作目は、テキサスはオースティンのフリージャズ/エクスペリメンタルの名作をマイペースにリリースし続ける Astral Spiritsから引き続きのリリース。そして、またしても2枚組の大作に。音場の隅々まで注意の行き届いた濃密な音楽風景はそのままに、よりダイナミックに、そして美しく進化したその音楽はまさしく圧倒的。ハヴァナやニューオーリンズで培ったラテンジャズのノウハウと、シカゴシーンの土壌が織り成すフリージャズの要素が完全に調和した、現代における演奏録音のひとつの到達点がここにある。
 
先行公開された”At This Point in Time”はElvin Jonesの演奏で知られる、Frank Fosterのペンによる楽曲。奇想天外ながら豪快な楽曲展開を見事に骨肉化し、ビッグバンドの高揚感を最大限にまでブラッシュアップした名演に仕上げている。その他の楽曲においても、1人多重録音から最大7人のフル編成に至るまで、相変わらずのミンガス愛やサン・ラ愛を惜しげも無く披露しつつ、スピリチュアルジャズ色の強い印象のあった前作に増してアフロ・キューバン色を前面に出した、リズミカルでアグレッシヴなアレンジが採用されている。今作でもあの幻想的なカリンバが楽しめるし、SP-303を随所で使用していることも、このリズム曼荼羅の構築に一役買っている。
 
最後に、クイン本人のコメントを。
 
“私のお気に入りのアルバムは、常にリスナーを旅に連れて行ってくれるものだった。私はそれを目指していて、自分のアルバムで世界を作ることを目指しているんだ。“The Other Side of Time” (前作) では物語のように展開させたかったし、“The Shadows and The Light”でもそのプロセスを続けてきた。私はクリエイティヴな音楽の様々なスタイルに影響を受けているし、それらの影響を全て調和させてアルバムを作りたいと思っている。
長編の作曲と短編の作曲があります。グルーヴがあって、自由な即興演奏があって、時には同時に演奏することもある。Elvin Jones と Frank Foster、Phil Cohran、 Carla Bley と Sun Ra などの偉大なミュージシャンの曲をカバーすることで敬意を表し、私のオリジナル曲は Charles Mingus (Lucid Dream) や Mr. Blount (Jupiter Moon) の影響に敬意を表しています。また、音の探求のためのスペースも作っています。(Shadow Intro、Ecliptics)
タイトルカットはそれ自体が壮大な旅のようなもので、何年もかけて作り直してきました。この作品がついに本当の形で命を吹き込まれたことを、嬉しく思う。”
 

Track listing: 
 
Disc 1:
1.Shadow Intro
2.Batá Chop
3.At This Point In Time
4.Rift
5.Pathways
6.Sahara
7.Star Cluster
8.Moon Vision
 
Disc 2:
1.Ecliptics
2.Planet Earth
3.Jupiter Moon
4.Horizons
5.King Korn
6.The Shadows and The Light
7.Lucid Dream