研ぎ澄まされた、怒り。
ポストパンクの残響に、スラム・ヴィレッジやセロニアス・モンクが木霊する。

「UKジャズの特異点」と名高いサウスロンドンの22aクルーを率いるトラックメーカーにしてフルート奏者 Tenderloniousとのコラボレーションでも知られる、ポーランドの先鋭的楽団 EABS。そのメンバーによる別動隊的活動にして、この時代の肌感覚を見事に捉えてしまった突然変異がBłotoだ。 2018年の夏、EABSのツアーのオフにて突発的に行われたセッションから生まれたこのダーティーに冴え渡った美しくも凶暴な録音は、 Wu-Tang ClanやCompany Flowといった、90年代のNYブーンバップを参照しながらも、温かく包み込むようなアンビエンスと、ジャズを音響から再定義する様な複雑な演奏の調和を信条とし、何者かに名前を付けられ再定義されることを拒むような、強かな賢智に満ちている。
 
“危機に瀕した地球の時代、明確な社会的分裂、 ヘイトスピーチ、増大するナショナリズム、 警察の横暴、ネポティズム、様々な政治的取引。 これらすべてが私たちの目の前で起こっています。 私たちが知っている世界の土壌は、今まさに浸食されています。”
 
『泥』というバンド名と、『浸食』というタイトルは、彼らがこの時代に感じている怒りや葛藤、違和感を率直に表明している。しかし、音楽的表現と して、その音像には所謂説教じみた仰々しさや、安易で直情的な所作は皆無であり、地下から自然発生した異形のルーティーンを垣間見る様 な、一切の気負いのないその有機的な演奏が聴き手に喚起させるイメージは、ある者にはSlum Village、またある者にはThelonious Monk、 さらにはBADBADNOTGOODやRadioheadといった、深く幅の広い音楽と共有することのできる豊かな情報量を蓄えている。
 
本作品はEzra Collectiveのメンバーが参加するCykadaなどを擁し、地元のシーンとは一線を画しながらも、時代の空気を共有するロンドンの 新鋭レーベル Astigmatic Recordsとのコラボレーション作品として、日本盤仕様の限定デザインでリリースされる。印象的なアートワークはク ラフト紙を用いたスリーヴにより、音とリンクした ざらりと手になじむ質感が楽しめる。国内盤にはボーナストラックとして未発表曲のライヴ録音を1曲収録。
 

Track listing: 
1.Kałuże
2.Mady
3.Czarnoziemy
4.Bagna
5.Czarne ziemie
6.Rędziny
7.Bielice
8.Ziemie zdegradowane przez człowieka
9.Glina
10.Gleby brunatne
11.Pan Kret (Mr. Mole) – Live at FINA*
(*国内盤ボーナストラック)