ペンギン・カフェ・オーケストラの1993年の名作『ユニオン・カフェ』
サイモン・ジェフズ没後20周年を記念してErased Tapesより再発。
日本流通盤にはライナーノーツの日本語訳とボーナストラックとして
サイモン・ジェフズによるソロ・ピアノ作のダウンロード収録予定。

ペンギン・カフェ・オーケストラが1993年に最後のスタジオレコーディング作として残した作品。ニルス・フラームやオーラヴル・アルナルズ、ピーター・ブロデリックなどの作品をリリースするErased Tapesがサイモン・ジェフスの遺志を引き継いだ息子アーサー・ジェフスから受け取った作品。いままでCD化はされていましたが、今回初となるLPとしてのリリースも予定しています。

 

Track listing:
01. Scherzo And Trio
02. Lifeboat (Lovers Rock)
03. Nothing Really Blue
04. Cage Dead
05. Vega
06. Yodel 3
07. Organum
08. Another One From Porlock
09. Thorn Tree Wind
10. Silver Star Of Bologna
11. Discover America
12. Pythagoras On The Line
13. Kora Kora
14. Lie Back And Think Of England
15. Red Shorts
16. Passing Through

 

<Erased Tapesレーベル・オーナー ロバート・ラスよりのコメント>
 
私はサイモン・ジェフズが亡くなったとき17歳で、悲しいことにあの有名なペンギン・カフェ・オーケストラと共に地球上を歩いている彼に会う機会はありませんでした。私たちの人生には、音楽を愛する者は多く旅をするという事実をシンプルに繋いでくれる共通点がいつかあります。しかしサイモンについて私が知っていることから考えると、私たちはお互いそれ以外の何か、数だけでは説明できないもっと魔法のようなものを信じていると思えるのです。例えば、京都は彼と私の人生に特別な影響を与えたという事実。彼の最も有名な曲を作曲したのは京都で見つけたハーモニウムであり、私は人生の愛に出会った街でもあるのです。または、フランスの南部で悪い魚介類を食べたことで私たちお互いに深刻な中毒をおこしたという事実。私に幻覚が起きた寝たきりの日々の中で、彼が見た反復するビジョンの壮大さに近づいたとまでは言えませんが。コンクリートの建築物に住む人々の荒れ果てた未来を象徴するGeorge Orwellのある作品に様に、聴こえない音像、触れる事のなく成立する愛と音楽。先日私はサイモンの息子アーサーが、ロンドンで最もブルータリストな建築物の一つSouthbank Centreで行われたErased Tapes10周年記念フェスティバルのBBCドキュメンタリーでこの話をして、インターネット上で音楽を作り愛を表現することが完全に正常なものと見なされる時代だと聞かされた。そして私たちが共有するフランスで死を感じた経験がサイモンにペンギン・カフェという場所を夢見ることを後押ししたという話を初めて知りました。ペンギン達が日本のソウルフードお好み焼きとリラックスした気分にさせてくれるワインを提供する、誰もが中立で無感覚で個性を失ってしまった巨大な灰色の建物から遠く離れたカラフルでマジカルな場所。そして彼はペンギン・カフェ・オーケストラを結成し、そのカフェでバンドが奏でる楽しい音楽を書く事に人生を捧げました。
 
私が知らずに聴いていた『Union Cafe』の最初の曲は、アーサーが彼の後継バンドペンギン・カフェで2016年の夏にブルータリストな建築物として知られる別のアイコンBarbicanで演奏した”Nothing Really Blue”だった。彼はシンプルに”私の父のものとは別の曲”として発表し、それがどのレコードだったかについて私は一晩中不思議に思っていました。彼らの音楽のまともな収集家として、私は彼らの曲をすべて聴いていたと思っていた。ああ、でも明らかにそうではなかった。何か謎がある?
私はアーサーと初めて会ったその夜に質問することを忘れていましたが、私達の親族のような関係の始まりとなったのです。まだ目の前で見た事のないすべての人にとって、アーサーは多くの喜びと本当に古い友達と会うような感情を持って父の曲を演奏しているように聴こえるでしょう。そしてそれは、この世界のすべてがどのようにつながっているかを最も美しく思い出させるものなのです。ある世代から次世代への絶え間ないエネルギーと知識を伝える為に成長と崩壊を受け入れること。しかしサイモンが、息子が自身の曲を毎晩地球の両側の何千人もの人々の前で演奏する姿をいまここで見る機会があったとすれば、彼はどんな愛情を持って見るだろうか私は本当に見当もつかない。
 
1年後の2017年の夏までアーサーは父の最後のスタジオ録音を私と共有していませんでした。『Union Cafe』は長年かけて集めた他のレコードのようにLP盤では入手できなかったので、単に私が見逃していた作品でした。ペンギン・カフェ・オーケストラの別のオリジナルアルバムを発見したような特別な感情を感じずにはいられませんでした。それで、私はヘッドホンをつけてビクトリアパークの小さな湖の麓に横たわりこの宝箱を聴きました。サイモンのすべての作品と同様に、私の閉じたまぶたの前には世界全体が現れる。私の目に涙を流させ、背骨を震わせ、顔に笑顔を浮かべさせる愛と驚きに満ちた世界。“Scherzo And Trio”はどんなにロンドンが薄暗くても私の人生を明るくしてくれようとする。”Organum”はアーサーが僕の結婚式で演奏してくれた曲。デジャヴのような”Cage Dead”は僕達のサウンド・ギャラリーで演奏してくれるすべてのアーティストとのライブ・セッションのテーマソング。”Silver Star Of Bologna” と”Kora Kora”はいままで聴いた事無いけどよく知ってる気分にしてくれるペンギン・カフェ・オーケストラらしい曲。“Lie Back And Think Of England”は熟練した作曲家の作品のように聞こえるけど、同時に馴染みがなくサイモンがオーケストラのために新しい冒険を計画していたのかと思わせる。”Passing Through”はアルバムの隠しトラックを持っていたことが90年代のバンドにとってとても人気があったことを思い出させてくれるけど、シンクから落ちてくる水の音でアルバムが終了し、レコードが突然終わる前にすべてのカオスと共にゆっくり音のパターンを形成し、そして終わりを告げる最も完璧な方法。
 
親愛なるサイモン。私たちは決して会うことはなかったけど、不思議なことに私は1997年12月11日に友人を失ったように感じます。あなたが私たちを残してくれた音楽すべて、それらの楽曲は我々が自分自身に築いてしまった拘置所に代わるものがあることを教えてくれる最高の仲間の一つだと私は思いたい。そしてすべての曲と共に私はあなたが作り上げた魔法の世界に一歩近づき、アーサーは創造し続ける。聴き続けていれば、いつかペンギン・カフェの中にすべてを集結しあなたとエミリーが育てたすばらしい息子について話すことができる日が来ると思える。そして、あなたがこの世に与えたすべての愛に感謝します。 ロバート・ラス (Erased Tapes)