彼の音楽は、魅惑的な美しさの中に愁いを秘めた繊細な旋律や音の響きをたたえている。LUZ DE AGUAの音の世界は、セバスティアン・マッキの美意識から生まれていることがよくわかる。
吉本 宏(bar buenos aires)
 
 
モダン・フォルクローレの金字塔『ルス・デ・アグア』のピアニストにして、アルゼンチン・ネオ・フォルクローレの次世代を担うセバスティアン・マッキの初ソロ作!

感情の自然な起伏を、自己とピアノとの関係を掘り下げながら音に映したような11曲を収めたパーソナルな1枚。失われつつある故郷パラナーの自然を思い、大地の声に耳をすませ、自己と対話するようにゆっくりと作られたピアノ独奏曲の数々は、ランプの灯火のように心を暖め、しずくのように波紋をひろげてゆきます。
 
メンドーサにある劇場「Teatro Independencia」でレコーディングされ、奇才エルナン・ハシントがミックスとマスタリングを手掛けた本作は、同郷パラナーで創作を続けるマッキの師、カルロス・アギーレが2006年に発表した『Caminos』から10年、河沿いの音楽家によるピアノ・ソロ作品の新たなる傑作といえるでしょう。

 

 

■トラックリスト
 01. 砂のわだち (Huella de arena)
 02. 朝の心 (Alma matinal)
 03. 歌い手たちよ、歌え (Canten senores cantores)
 04. 夜のホテイアオイ (Camalote nocturno)
 05. 手紙での同意 (Conforma de carta)
 06. 真昼の黄金 (El oro del mediodia)
 07. 牛追いは行く (El arriero)
 08. 冬 (Invierno)
 09. 真実 (Verdad)
 10. 風のチャジャ (Chaya de los vientos)
 11. 20着の緑色の服 (20 trajes verdes)

 

Sebastian Macchi

セバスティアン・マッキ

アルゼンチン・モダン・フォルクローレの最重要アーティスト、カルロス・アギーレの音楽的薫陶を受けながらも、フェルナンド・シルヴァ/クラウディオ・ボルサーニとの連名で発表した『LUZ DE AGUA』やルカス・ニコティアンとのピアノ・デュオ等の名作で鮮烈な印象を与え、ここ日本でも多くのリスナーに注目されてきたセバスティアン・マッキ。最近ではbar buenos airesの最新コンピ『flor』独占収録曲として同名曲を提供したり、セシリア・パールのアルバムに全面的に参加し素晴らしいピアノ〜アレンジ・ワークを披露するなど、ソロ・アルバムのリリースがもっとも待たれていたアーティストの一人と言っても過言ではありません。
 
その初となるソロ・アルバムは、これまでの活動で蓄積された自身の音楽の全てを、ピアノ・ソロというシンプルな表現に注ぎ込んだかのような作品。叙情的なメロディーラインが耳に残る ① 、印象派の影響を感じさせる独創性溢れるハーモニーと起伏に富んだ展開に引きこまれる ② 、柔らかなハイノートとリリカルな曲調に安らぎを覚える ③ 、躍動感溢れるタッチでオープニングからドラマティックに展開する ④ など、どの曲も長年に渡りじっくりと作りこまれ、演奏をかさねて熟成されてきたことがわかる作品が並びます。収録11曲中8曲がオリジナル作品となり、③は伝承曲、⑦はユパンキ作、そしてボーナス・トラックとして収録された⑪はチャーリー・ガルシア作。
 
レコーディングは今年の2月にアンデス山脈の麓の都市メンドーサにある劇場「TEATRO INDEPENDENCIA」で行われ、エルナン・ハシントがミックスとマスタリングを手掛けて完成したこの作品。アルバム全編に渡ってさまざまな表情を見せながらも、自己の内面世界と対話するような「内省の美」の響きを宿したピアノ独奏アルバムの秀作として、そしてモダン・フォルクローレの新たなるマイルストーンとして長く聴かれていくことでしょう。