|
miaou x Tracer AMC 対談 『ポストロックの様式美を超える』
「取材・文:周東香里/CD Journal」
さる11月に北アイルランドのインスト・ロック・バンドTRACER AMCが初来日。9月に「painted e.p.」を発表した国産インスト・バンドmiaouとツアーを行なった。アンサンブルで繊細な音空間を織り上げることを得意とし、“ポスト・ロック”というシーンのなかでも音楽的センスが近しいこの2バンドに、全国9公演をともに回った手ごたえを聞いた。
●一緒にツアーをすることになった経緯を教えてください。
長谷川真弓(miaou):「日本でライヴをしたいから協力してほしい」というメールを、突然アレックスからもらいまして(笑)。TRACER AMC(以下トレーサー)は前から大好きなので、一緒にツアーをすることにしたんです。
浜崎(miaou):日本ではレーベルも同じ(Thomason Sounds)だしね。
アレックス・ドナルド(TRACER AMC):miaouのことをインターネットで知って、突然(笑)メールを出したんだ。miaouから返事がきて来日が決まったよ。その後、今年(2006年)の4月に休暇で日本に来た時にmiaouのライヴを観たんだけど、一緒にやるのがますます楽しみになったね。グロッケンシュピールとかローズも使ってるし、エレクトロニクスの要素を取り入れてるのもすごくいいと思うよ。
●トレーサーはCDでの印象とは違って、ライヴではすごくエモーショナルなロック・バンドなんですね。
アレックス:いいね、ロック・バンド(笑)! 僕は、音楽ってすごくエモーショナルなものだと思う。さまざまなエモーションを音楽で伝えることを目標としているんだ。ライヴでそれが伝わったとしたらすごく嬉しいな。
●miaouは雰囲気たっぷりのステージですね。
浜崎:そうですね。曲にストーリーがあると考えてもらえるといいかな。
長谷川:気持ちをこめて演奏するのを心がけてます。歌がない分、そんな思いがありますね。
浜崎:それがエモーショナルってことかも。こんなストーリーを想像しようって、テーマをもって演奏してますね。そうすることでみんなの思いが積み上がって、いい演奏ができると思うんです。
●ポスト・ロックという意識はありますか?
浜崎:ポスト・ロックと言われてイヤではないですけど、僕らはどっちかというとポップなフィールドで作っていけると思っていますね。
アレックス:僕らもポスト・ロックを意識したことはないね。ただ僕らがこの音楽を始めたとき、北アイルランドにはこういうバンドがいなかったんだ。それで当時、流行りだしていたポスト・ロックと呼ばれたんじゃないかな。今のトレーサーのスタイルは徐々に確立されてきたもので、典型的なポスト・ロックというよりもトレーサーのスタイルとしてあるんだ。ただ、ほとんどのポスト・ロックってインストだから、ポスト・ロック・バンドってインスト・バンドのことだっていうのはある意味正しい
と思う。
●どちらのバンドもほとんどの曲がインストですね。
浜崎:僕らは単純に歌があまり巧くないんです。
一同:(笑)。
アレックス:僕も歌えないんだよ(笑)。
マイケル・キンロック(TRACER AMC):僕もね(笑)。
浜崎:あと、歌詞があると、わかりやすいけどイメージが限定されてしまう。リスナーにはいろんなイメージをもってほしいんです。それってすごくおもしろいことだと思う。
アレックス:僕らの曲には歌が少し入っているものもあるんだけど、デモにヴォーカルがのっていても、アルバムになった時には外されているパターンが多いんだよ。
miaou:えー!
●miaouは、曲を作る段階で歌があったほうがいいな、と思う時は?
長谷川:ほぼないですね。
浜崎:歌を絶対入れないつもりはないけど、作る段階では意識してないです。
アレックス:リフを残して歌が却下になるのは、メロディがほかの楽器に置き換えられるから。そのほうがいいなってね。曲を作りやすいから最初は歌がのっているけど、最終形ではないんだ。もっとポップにしたくなったら歌も入れるかもしれないけど、それなりに強く歌の必要性を感じないとね。あと曲のストラクチャーがわりと変則的なので、歌をのせにくいのもあるかな。
●その変則的な曲構成って、もしかしてプログレの影響があったりしますか?
マイケル:まったくないね(笑)!。両親は聴いていたけれど……過去の音楽っていうイメージがあるなあ。
アレックス:僕らは結構幅広く音楽を聴いているので、いろんな影響はあると思うんだけど、単なる3分間のポップ・ソングじゃつまらないから、そうじゃないことをやってるんだ。僕らの次のアルバムはおもしろいことになるよ。これまでと違った音楽を聴いてるからね。どのみちRUSHのゲディ・リーみたいにはベースを弾けないし(笑)。マイケルのギターだけで十分だよ。
●miaouは、プログレッシヴだねって言われたら?
長谷川:悪い気はしないですね。
浜崎:僕らプログレを聴いてた時期があるんです。アシュ・ラ・テンペルとか、グル・グル、CAN、ノイ!とかを。
●昔のプログレと今のポスト・ロックって、どこかで繋がっていると思いませんか?
アレックス:“プログレが紆余曲折してポスト・ロックに行き着いた”って考え方もあるけど、70年代にパンクが出てきたことでプログレが一掃され、そのあとポスト・ロックが生まれたと僕は思うんだ。僕らは、プログレよりは、考え方とかはむしろパンクに近い。北アイルランドってパンクのシーンがあったんだよ。スティッフ・リトル・フィンガーズとか、アンダートーンズとか。僕らもそのへんからの影響を受けているんだ。
miaou:わあ〜意外〜!
アレックス:あとジョイ・ディヴィジョンとかのニューウェイヴも結構聴いてたね。
●miaouは、パンクだねって言われたら(笑)?
浜崎:僕らはパンクに入れられちゃうと、かなりイヤだな(笑)。
●そんなバンドが今一緒にライヴを楽しめてますよね。実際お互いの音楽で、共通している、または違うなと感じるところはどこですか?
浜崎:ソニック・ユースとかトータスとか、リスペクトするバンドが近いんです。今はそうでもないけど、以前は僕ら轟音やノイズを鳴らしてたし、そんなイメージで作ってきたんで、同じものがトレーサーにもあるのがわかりますね。
アレックス:僕らは基本的にライヴでは“4人組のロック・バンド”っていう点を強調したいんだ。以前はもっといろんなことをライヴでもやってたんだよ。楽器を交換したり、グロッケンシュピールとかエレクトロニック・ドラムとかも使っていたんだけど、ライヴではあくまでも4人による、音をそぎ落としたシンプルな形のロック・バンドでありたいと思うようになった。でもmiaouはアルバムの音を見事にライヴでも再現できているよね。
浜崎:僕らは再現することを目標に練習しているから。
●複雑に作り込んだ音を再現する快感ってあるんじゃないですか?
浜崎:あると思います。再現すると、さらに上みたいなものが見えてくるんです。
長谷川:音源を超えたっていうね。
浜崎:その快感じゃないですけど、そういうのがすごく楽しいですね。
アレックス:アルバムにライヴ感をとらえるってすごく難しい。何ヵ月もかけて制作したアルバムも、最終的にステレオから出てくる音を聴くと「こんなもんなのかな」って感じちゃうけど、そこに情熱なりエモーションなりを加えられる場っていうのがライヴなんだと思う。それがライヴの素晴らしさだよね。
|