去っていくピアノの残響を両の手でゆっくりと掬い上げるように。

 

このアルバムは、宮崎県在住のピアニスト横山起朗の5作目のCDである。ピアノは一音鳴らすとその音は減衰しやがて消滅する。その最も美しい去りきってしまう前の残響を丁寧に掬い上げることにより静けさの中、どこか淡い光を感じる作品に仕上がった。最小限のハーモニーで作られた(M-1) sae はアルバムのテーマであり(M-5) itsuka では音の消えゆく瞬間まで耳を傾けさせる。そして(M-12) minori では新しい季節の喜びを告げるように音が跳ねる。本作の quiet new という二つの形容詞を並べただけのシンプルなタイトルには、聴き手の自由な解釈で美しい空気を浴びるように聴いて欲しいという願いが込められている。
 
尚、本作は料理家の「月の石」こと樋口加代子氏の主催する新たな季節の到来を祝い静かな時間を過ごす「予祝」という食事会のBGMとして制作されたものを音源化したものであり、CDを包む折りたたんだ紙をほどくと裏面に横山の撮影した写真と言葉が添えられている。
 
1 sae
2 miru
3 awasu
4 teto
5 itsuka
6 kakoto
7 hajime
8 sourai
9 torito
10 emi
11 sorani
12 minori
13 hiwo
14 arata
15 tsukishiro