言葉がないからこそ、旋律はさらに甘美な余韻をまとい、深い情感を伝えてくれる。イタリアの世界的バンドネオン奏者ダニエーレ・ディ・ボナヴェントゥラが、20年以上のキャリアで初めて発表するピアノ・ソロ・アルバムを聴くと、彼がピアニストとしても卓越した表現力を持つことだけでなく、とても優れた作曲家であることがわかります。

 

バンドネオンを携え、クラシック音楽から現代音楽、ジャズ、タンゴそしてワールドミュージック、さらには宗教音楽や劇場音楽まで、ジャンルや国境を超えて独自の音楽を追究してきたダニエーレ・ディ・ボナヴェントゥラ。これまでさまざまなスタイルで録音し発表してきた数多くの自作曲の中から選び、ピアノという楽器で再解釈するというここ数年の試みが結実したのが、このアルバム『Romanze senza parole – ピアノのための無言歌集』です。
 
アルバム名が19世紀ドイツの作曲家メンデルスゾーンによるピアノ曲連作「無言歌集」からつけられたことからもわかるように、その旋律は凛としたたたずまいの中に甘美な情感をたたえ、言葉がないからこそ豊かなイメージを伝えてくれます。収録曲には彼の代表曲であり、bar buenos airesのコンピレーション・シリーズ『Viento, Luz, Agua』に収録、さらに同シリーズ『地中海と室内楽』ではバンドネオン・ソロの録りおろしバージョンが独占収録された「Orizzonte」、ピアニストのジョヴァンニ・チェッカレッリとのデュオ・アルバム『Mare Calmo – 穏やかな海』に収められた「Maria e il mare」「La regina delle api」「Waltz for Catia」、そして1999年のデビュー・アルバム「Bandoneon & Bandoneon」収録の「Milonga dell’assenza」「Tango」、ECMからリリースされたパオロ・フレスとの共演盤『Mistico mediterraneo』から「Sanctus」まで、幅広くピックアップされています。そして、2012年に亡くなったアコーディオン奏者フランク・マロッコに捧げた「Frank among the stars」、そしてこのアルバムのために書き下ろされた「Le mie Colline」の2曲は本作が初出。どちらも優しいピアノのタッチと流麗な旋律が胸を打つ佳曲です。
 
 
<アーティスト紹介>
イタリアのマルケ州フェルモ出身の作編曲家、バンドネオン奏者、ピアニスト。8歳の時からピアノ、チェロ、作曲と指揮を学び、大学では作曲学を学ぶ。バンドネオン奏者としてプロ活動を始めると、タンゴに留まらずクラシック音楽から現代音楽や即興演奏、さらにジャズや民族音楽まで演奏する音楽の幅を広げ、演劇や映画音楽も手掛けている。数多くの音楽家とのコラボレーションも積極的に行っており、これまでに共演した主な音楽家はトゥーツ・シールマンス、デヴィッド・リーブマン、エンリコ・ラヴァ、ギンガ、ディノ・サルーシ、オマール・ソーサ、イヴァン・リンスなど。世界的トランペット奏者パオロ・フレス、ピアニストのジョヴァンニ・チェッカレッリとの共作アルバムはそれぞれ2枚発表して大きな評価を得るなど、国境やジャンルを超えて活躍している。代表曲の1つ「Orizzonte」は、bar buenos ariesやBEAU PAYSAGEのコンピレーションにそれぞれ別バージョンが収録されるなど日本のリスナーにも深く愛されており、2016年9月の来日時にはbar buenos aires主催でソロ・コンサートも開催された。
 
 
<収録曲>
 01. Maria e il mare
 02. Sogno di primavera
 03. Frank among the stars
 04. Milonga dell’assenza
 05. Orizzonte
 06. Sanctus
 07. La regina delle api
 08. Tango
 09. Preghiera
 10. Waltz for catia
 11. Le mie colline
 
 
 
02「Sogno di Primavera」MV

 
 
11「Le Mie Colline」MV