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10/31 UP!


markant records
http://www.markant-records.com/

 ここんとこレコ屋でよく、10/5に出たAFX『hangable auto bulb』を耳にする。聴いてすぐそれと分かる音なのが流石だと感心しつつ、別にちょっとした感慨をおぼえた。これは過去音源をまとめた作品だが、それでもAFXを懐かしく感じたのは初めてかもしれないと気づいた気がしたのである。もちろん毎日彼の作品を聴いている訳ではないから怪しい感慨ではあるのだけど、前作に当たる『26 remixes for cash』を聴いた時の、古びる事を拒絶するような楽曲群に感じたショックが私の頭にはあった。懐かしさと共に、脅威が過ぎ去った安心感と、自分で何も苦労せずにこの時を迎えてしまった事の苦さが襲った。本気で彼を捉えようと取り組んだ人は、今私より全然高いところに立っているだろう。勝手だけどこころから願わくば、立って尚且つ彼等が「分かった時には何の意味も成さなくなっていた」という聞き慣れた失望を口にしな
い事を。
 ブレイクビーツやidmの破壊的なサウンドスケープは、もはや様式として根付いた。それはAFXらしさやオウテカらしさとは別なのに、いまだに彼等をまず思い出してしまうのはちょっと哀しいけれど、架空のサウンドトラックどころか映画そのもののような逸品に耽溺できるのは嬉しい。この作品など愛着を込めてidmクラシックと呼びたい。markantはニカ全盛を影で支えた「裏トロニカ」と認識していた。原雅明氏のレビューで知ったけれど、殆どのリリースが12"で当時の私にはフォローできなかった。今回の3年振りのカムバックまでの間、carsten endrassは機材や蒐集レコードを売却して音楽から離れたりしていたようだ。彼は言う――「markantは音楽への深い愛であり、ロマンチシズムへの没入であり、抽象性への隠逸であり、拍をつき崩す夏の雷光の衝撃的な強度である」。この無防備な発言を親しみを込めて読み替えるなら、この男はbolaになりたかったという事なんじゃないかと思う。ブレイクビーツの栄光を一足飛びに飛び越して、第二世代辺りのテクノと同期するようなピュアネスがあるように感じられる。リリシズムはカタストロフィを夢見、疾走感は自己を振り切って美を目指そうとしている。(中澤始)




10/28 UP!


quatermass
http://www.quatermass.net/

 初め何の情報も無くこの作品を聴いたとき、一体全体どこの国のどんなアーティストなのか想像すら出来なかった。どこか異国の映画に出てくる、架空のバンドのサウンドトラックを聴いているような、外国にあこがれながらも、じつは漠然としたイメージばかりで実は何も知らないというような、そんな感覚は、いまだに残ってはいるのだけど。ちょっと調べてみれば、ブルックリンのCALLAというバンドのドラマーwayneによるソロ作なのだと、といってもそんなバンドは聴いたこと無いし、ブルックリンについて何を知っているわけでもない。結局何も知らないのと一緒ということになるが、それはそれで良いのかもしれない。情報に満ちあふれ、いろいろなモノを見過ぎて、先入観と気後ればかりで、にっちもさっちも行かなくなってしまうより、想像力という最近あまり使わなくなってしまった能力をつかう良い機会だ。なんだか話がそれてしまったけど、肝心の内容は、いい意味でチープ&ローファイなプロダクション。生なのか、打ち込みなのか、よく分からないドラムの音色とビートは、少し違和感を感じつつも、なんだか妙に気持ち良い(おそらく生ドラムに打ち込みをミックスしているように思う)。枯れたアコギの音に重なる、どこか異国情緒を感じる女性の歌声とメロディ。そんな純然たる歌物から、すこしばかり実験的で、前時代のフォークトロニカとでも言えそうなトラックまで、全10曲。全体に漂うどことなくエスニックな雰囲気のせいなのか、全くと言っていいほど派手さは無いのに、なんでかすごく魅力を感じてしまう。決して何も新しくは無いのに、なにか新鮮。それがなにか確かめようと、何度も何度も聴いていたら、ジャケットのイメージ通りセピアだった写真が、だんだんと色彩を帯びていくかのように鮮やかに聴こえてきた気がする。(ユキシュンスケ)




10/24 UP!


dekorder
http://www.dekorder.de/

 sogarというアーティストにはやはり思い入れがあるというか優秀性を相当認めていて、名前を見かけると注視せずにいられない。まだゲットしない内に『stengel』が廃盤になったと聞けば「何やってんのlistぉ〜」と密かに激昂し(後にめでたく購入)、hapnaからsagor & swingの新作がリリースされれば勘違いして「sogarの共作?」と気を揉み(hapnaの常連なのにね、知らなかったんです)、ひとには言えないちょっと尋常でない反応を、思い返せばしてきている(言っちゃった)。かってvladislav delayもリリースしたsigma editionsのパッケージと見紛うような、つまりは単色ジャケのcdrライヴシリーズは(こっちはパステルカラーだけど)、それだけで目を惹いたけどsogarの作品が含まれていた事が大きかった。そのリリース元であるmr. muttやラインナップがかなりスゴイtu m'p3など、テクノロジーが可能にしたフットワークの軽さが一人歩きしていない、手法としてコンテンツをうまく補い得たレーベルをやっているのがtu m'。レーベルのアイデアもそうだけど、映像にも手をかけていて、なかなか多才なこの伊デュオの音楽サイド最新作がこれです。冒頭曲はfonicaを思わせるように清涼だけれど、40分弱の全体のテクスチュアはちょっと違って、この夜は何か妙に「苦い」。ビタースウィートとかそういうのじゃなく、何て言うんだろう、寂しさが荒れているというか。落ち着いたトーンがささくれている。美しい平静の日常の隅で深淵がぽっかり口を開けている。そんな感じで、昔黒沢清の映画でこういうのみたかなあと思ったり。akira raberaisを思い出したのは多分プロセシングのせい。(中澤始)




10/07 UP!


staalplaat
http://www.staalplaat.com/

 mort aux vachesにtape登場ですよ!と、マジかよ!と、一緒になって喜んでくれる人はご承知かと思いますが、順序としては、まあやはりhapnaから出ている1stと2ndはまず聴いておきたいところですね。名作です。自然造型とアラベスク調シンメトリの配置が絶妙にして俊麗なデザインも素晴らしい(プラス、丸くて芯の軟らかい鉛筆で書かれた風の文字表記がね、とっても好きなんですよ)。あともちろん、優良企画賞を進呈したいcubicfabricからのリミックス盤『operette』も聴いておいた方が……という訳で、要するに全作聴けと。次のオリジナルアルバムはheadzから日本盤リリースが決定したようなので、未体験の人もこのスウェーデンの至宝に触れるチャンスでもあります、是非。彼らの良さはやっぱり風景を彫刻するような演奏にあって、ライヴペインティングのような時間芸術というかインスタレーション的だから、セッションレコーディング・シリーズであるmort aux vachesにはまさにずっぱまりの適役なんじゃないでしょうか。名物の特殊パッケージは今回も良いですが(いやーでもmitchell akiyamaの銅板は驚きました)、キモは「テープ留め」というシャレのようで、なぜか留める「テープ」を和製英語もように思っていた私は認識を新たにできました。それにしてもmort aux vaches、ちょっと調べたところでももう50作近くになる。全作レビューとか超見てぇ。全部持ってる人ってどれくらいいるんでしょう。日本なら10人くらいいそうだけどなあ。(中澤始) 

オランダのラジオ局VPROでのレコーディングセッションをリリースする"Mort Aux Vaches"シリーズ、今回は2004年9月に録音されたTapeの音源。緻密に構成され、ある意味かなりポップともいえる2nd "Milieu"というより、1st "Opera"に近い、半即興的で適度な緊張感を保ちつつも、リラックスしたセッションになっている。アコースティックギターのアルペジオ、ハーモニウムによるドローンをベースに、限りなく抑制されたシンセサイザー、グロッケン、ハモンドオルガンなどの音がキラキラと瞬き、揺らめく。全6曲入りのこのアルバム、淡々と進んでいくようだが、導入としてハーモニウムによるドローンを主体にグロッケンやシンセの音が戯れるT1から、まさにTapeといった、アコギのアルペジオがとても優しいT2、T5、T6(この6曲目は格別に美しく、優しい)、音数を抑えたかなりインプロ色の強いT3、至極ミニマルにシンセによるノイズをバックにアコギが永遠と同じコードをあわせるT4など、よく聴けば、実に変化に富んでいる。Tapeの音楽は聴く側がしっかり心の波長を合わせて聴かなければいけない、心を落ち着け、静かな心で聴くと、すっとこの世界に入っていける。彼らの音楽は決して難解では無いが、聴き手をぐっとつかんで、こちらの気分を力強く引っ張っていってくれるようなものでも無い。エリックサティのピアノ曲のようにそっとそこにある、といった音楽であると思う。フォークトロニカ、エレクトロアコースティック、音響系、など言葉としてはもうすでに古くなってしまった感があるが、Tapeはそれらに乗っかった一過性のアーティストでは決して無く、それら表現方法を完全に自分達のものとして証明してくれる。もうすぐリリースされる3rdアルバム"Rideau"がとても楽しみだ。(ユキシュンスケ)




10/07 UP!


lejos discos
http://www.lejosdiscos.com/

 セルフタイトルのデビュー作(2002/indussonica)に続くarbolの2nd。arbolはスペインのmiguel marinのソロユニットで、彼はpiano magicのメンバーとしての活動歴もある人物だ。piano magicという名も、なんか事ある毎に口の端に上っているのに実はよく知らないまま何故かcombo pianoとごっちゃになって「あれ、日本人だっけ?」とか思ったりしてたのは私だけかもしれないんだけど、UKで発足してもう10年になるこのユニットは緩めのコレクティヴとして機能しているようで、1stに続き本作でも歌っているsuzy mangionもここにいた事があり、rocket girl傘下のindus sonicaやacuarela discos、そしてこの新興lejos discos等のレーベルに注目すると、そのコネクションの一端を窺い知る事ができる(「discos」というのは「discs」と英訳できるけど、スペイン語圏で「records」に相当する使われ方をしている例が結構ありますね)。各トラックタイトルから察して、本作の下敷きには何か具体的なストーリーがありそうだが、インタールードの配置や空気感を重視した演奏によって、どこか西洋的な贖罪観やエレガントな頽廃美が醸されている。ただ、この壮麗さは、簡単に宗教的だと言ってしまうのが躊躇われるのと同じ程度に、ありがちなというか予想されるサントラ的演出からは遠いように思える。要するに、音楽としてよく出来ていて、動機の根も深そうなのである。ニカ・エッセンスがうまく効いていて、埋もれがちな良質さにアクセントを添えている。「4ADトロニカ」ってんでどうすかね?
 みたいな(ひでぇ……けど形容って事で許して)。3曲目「bright day」の映像データを収録。セピアトーンとかsuzy嬢らしき女性のヌードとか、見どころはまああるがこっちは習作程度(っていうか、ホント映像って難しいと思う)。あと、手作り感溢れるパッケージが吉。(中澤始)




10/04 UP!


staalplaat
http://www.staalplaat.com/

 オランダのラジオ局、VPROでのレコーディングをリリースするmort aux vachesシリーズより、前作"small explosions that are yours to keep"の記憶も新しいmitchell akiyamaの音源がリリース。2004年4月に行われたこのセッションでは用意されたサンプルなどはいっさい使わず、ギターと、限られたエフェクト、ラップトップのデジタルプロセッシングのみで演奏されたそうだ。即興で一曲のみという潔さ、40分以上にもわたる緊張感に満ちた演奏を繰り広げている。エレクトリックギターの音は限りなく引き延ばされドローンを産み、その上を電子的に歪まされ、カットアップされたフレーズやグリッチノイズが飛び交う、虚ろにつま弾かれるギターの音は、断片的に細かく反響を繰り返し、いつのまにか現れ、そっと消えていく。なんだか海の底で上の方からゆっくり降ってくる様々な音を、そっと聴いている(見ている)ような気分になる。それぞれの音色自体は無機質な印象ながら、その音の重なりはとても有機的で豊かな空間あらわにする。とても静的でありながら、ゆったりとした変化を繰り返しときおりギターのフィードバックノイズにより全体が轟音につつまれる。全編をとおして、ずっと同じような音が鳴っているにも関わらず、きちんとメリハリが効いている。そんな相反する要素を同時に内包しつつ、至極抽象的でありながらも、確固たる説得力をもって鳴らされているであろう、この音楽は、大きな包容力と緊張感を併せ持つ、静かな海のようだ。そうだ、忘れてはいけないのはジャケット。このシリーズはいつもジャケットに趣向をこらしているが、今作ではなんと銅板にエンボス加工でタイトルなどが刻まれたもので、ふとしたときに指を切りそうな、かなり攻撃的なジャケットになっている。そんなわけで、くれぐれも気をつけてくださいね。(ユキシュンスケ)






SIN
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中澤始
音楽ライター。
見切り発車でフリーに。見切り過ぎだよトホホ…。
書きます。仕事ください。
本多千鶴
1974年生まれ、山形県出身。音楽ライターを志す栄養士。
「KITTEN」「ミュージクマガジン」誌などで書いています。
小野寺徹
音楽ライター。時折MM誌にレビューを書いてます。理屈よりも音で伝わるような音楽を言葉で伝えるのに苦心しています。
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ユキシュンスケ
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ときに映像の音楽なども手がけながら精力的に活動中。
その他、ライブイベント「childlike tree」の運営など。
http://yukai.jp/~nowhere/
大崎暢平
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