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05/31 UP!


spekk

http://www.spekk.net/

 john hudakのそれまでのイメージを一新してみせたspekkからまた野心的な一枚が登場。boca ratonことマータイン・テリンガはここ数年のエレクトロアコースティック・シーンにおける最大の注目株。アムステルダムのmixerレーベルのオーナーとして知られ、アーティストとしては自身の作品制作と精力的なライブ活動に加え、映画に音楽を提供するなど映像分野とも積極的に交流する。かつてはイベントのオーガナイズを行っていた経験もあり、staalplaatがベルリンに移ったいま、今後のオランダ・シーンを担う重要人物と考えて間違いない。
 2002年に自身が運営するmixerから200枚限定で発表した7インチ"bratra"がboca ratonのデビュー・リリースとなり、その後シカゴのboxmedia、ギリシャのabsurd、いずれも少数のCD-Rプレスながら着実に作品のリリースを続けてきた。今年に入ってからペースが上がり、korm plasticsの名物シリーズ"kapotte muziek by..."へrichard chartierと共に参加、またcronicaのスプリット・シリーズでのライブ音源があるが、本作がCDでの初のソロ・アルバムであり、日本できちんと紹介されるのは初めての機会となるといっていい。
 ミュージック・コンクレートと呼ばれるこの類いの作品は長尺のものが多いが、本人が「ジグソーパズル」と説明する本作では、'enzo'のパートを構成する10トラックのほとんどが3分未満、中にはわずか20秒というものもある。そして最後の11トラック目に、'enzo'の全てのトラックを使ってリビルドした16分のロングピース'further'が現れる。一聴しただけでは気まぐれにも思えるユニークな構成と、作品をミュージック・コンクレートの外へと押し拡げる電子音の大胆な導入は、コンポジションにおける確固たる決断の結果であり、これまでの作品の中で、「アブストラクト」という形容からは最も遠く、コンポーザーとしてのヴィジョンがクリアに投影されたもの。これまでの実験をより完成された楽曲として昇華させるアプローチがもたらす首尾一貫した構成は確かな才能の賜物であり、本人がこの作品をファースト・アルバムと呼ぶのも納得。
 ごく最近では、自らサウンド・インスタレーションを手掛け、さらにオランダの音楽専門ラジオ局でプログラマーとして電子音楽を紹介する活動も始めたという。近々そこで日本の電子音楽を特集する計画も進行中。息の長いアーティストを輩出するオランダのエクスペリメンタル・シーンにあっては、74年生まれの彼はまだまだ若い世代に当たる。アーティストにとって成長の時期といわれる30才代は、マータイン・テリンガにとっても例外ではなさそうだ。(TH)





05/25 UP!


plop / inpartmaint
http://www.inpartmaint.com/plop/

 むむむこれは……コペルニクス的転回、いや、カントもコペルニクスも関係ないけど、前のアルバム『bye bye』で仏エレクトロニカの寵児となったdomoticの事、これは面喰らいます。前作の魅力だったニカ調の繊細さは殆ど姿を見せず、本作はメロディのダイナミズムを発揮する方向にシフトしていて、結果、あまり音楽に関心がないような人にもアピールするような作品に仕上がってます。ウィーザーの『ピンカートン』に涙した事がある。七尾旅人の音楽がとても他人事と思えない。こうした経験をお持ちなら間違いないので買ってください。あーあと資料にあったけどフレーミング・リップス。ウェインの声が天恵に聴こえる人も是非。トラを探してるんだそうです、何だろ、トラって。
 私はこういうのは正直苦手、というか迷惑なのである。私もいい歳だ。頼りないのはゴメンだし後ろみて迷ってたくないしちゃんとしていたいホントは好き勝手やってるだけなんだけどそれでも、辛いのはお前だけじゃねえんだぞとか叱咤したり色んな不安や疲労や泣き言を抑えつけたりして、岐路岐路自分で道選んできて、そうやって自分みたいなものを作っていくのか必要に押されて選び続けて出来たヘンなものが気付けば自分だったって事か知らないけどまあそういう何か積み上げてきたものを、このめくるめく極彩色ポップサウンドは、ブッ壊してしまうのである。目瞑って遣り過ごそうとしてたらしい事に気付かされてしまう。ゲシュタルトは崩壊するんですか、知りませんよそんな事。ざわざわ鳥肌が立ってアワアワしてきてしまいには涙でグショグショ。子供みたいだ。んでそうやって感動しておいて迷惑がっている。不自由なものだ。トホホだよもう。……あの、「私この作品好きです」と言ってるんですが、分かって頂けたでしょうか。(中澤始)





05/23 UP!


type
http://www.typerecords.com/

 きっかけは確か『ひかりのまち』という映画だった気がするが、映画音楽にハマった時期がある。マイケル・ナイマンが手がけたその映画のサントラを皮切りに、次々といろんなサントラを買い漁った。『ピアノ・レッスン』とか『ベティー・ブルー』とか昔流行っていた映画のサントラとかは、中古レコード屋で大抵300円ぐらいで叩き売られているが、そういうのを中心に。『ツイン・ピークス』のサントラもそのうちの一枚で確か150円。アンジェロ・バダラメンティが手がけたこの作品は、サントラのランキングがあったらきっとかなりの確率で一位になるだろう名作。なかでも「ツイン・ピークスのテーマ」は歴史的な名曲で、ぼくはこの曲があれば他の音楽なんていらないんじゃないの?なんて一時は考えていたような気がする。
 ある種の音楽に対して用いられている、「シネマティック」という形容詞はよく考えたら不思議で、もしも映画を観ることを人生の目的にしてしまったとして、これから死ぬまでで世界中の映画を見尽くそうと考えても、時間が有限な限り物理的に無理というか、無理して見続けたら逆に早死にするかも?とにかく、もう数え切れないぐらい映画作品は存在していて、平均的な映画、つまり映画的な映画なんてものを断定できない以上、「シネマティック」とか簡単に使えるわけないのによく使ってしまう。そしてぼくはそういう音楽が好きなのだ。共通幻想?ぼくとあなたの映画観が同じだと言い切れるかなんて分からないわけで、もしかしたら同じ「シネマティック」でも実は違うかもしれないので注意。とりあえず、ぼくにとっての「シネマティック」はこの「ツイン・ピークスのテーマ」を基本にするということを表明しておこう。たぶん今後もよく使うだろうし。基本にしてはいるのだけど、「ツイン・ピークスのテーマ」以上の曲なんて存在しないという信念に基づいていることも一応表明しておく。
 さて、UKのtypeのニューリリースであるryan teagueというイギリスの青年によるこのデビュー作も、「シネマティック」な美しい作品。クラシック音楽出身の人がエレクトロニカやエクスペリメンタル・ミュージックに傾倒する例はよくあるが、この彼もそう。スティーヴ・ライヒ的とも言える雰囲気の楽曲は、エクスペリメンタリズムに偏りすぎておらず、美しく鳴り響く弦楽器の調べにぼくの心は奪われてしまう。特に一曲目は弦好きにはたまらない。typeのリリースに対する信頼は個人的にはもはや確固たるものとなったので、とりあえずぼくは期待のハードルをそれなりに高くしていく。畑違いではあっても音楽の素晴らしさは同じということで、「ツイン・ピークスのテーマ」を越える作品が聴きたい、という期待は少しハードルが高すぎるだろうか。まあ、あれ以上の曲なんて存在しないという信念は堅すぎて、実際、期待を裏切られることがあっても落胆することもないのでいいか。(SIN)




05/20 UP!


spekk
http://www.spekk.net/

 どういう経緯でここに鎮座ましましているのか、というような全集系のセット書籍が実家にあったりしません? 今のティーネイジャー辺りはどうか知らないけれど、団塊の世代を親に持つ人だと割とありそう。先日大学の同期の知人の田舎に行く機会があり、自分の実家にあるのと同じシリーズを彼の部屋で見つけて驚いた。一緒にお邪魔した別の知人も家にあると言う。教育側の要請があった記憶もなく、遠く離れたそれぞれの家で共にそんなものを備えているのがおかしな符合に思え、所謂総中流化の過程でこういうものは全国的に買われたのかなどと考えたりした。講談社の「こどもカラー図鑑」などかなりの家庭にありそうだ。これが例えば話がファミコンとなると、みんなが持ってはいても当たり前過ぎてさほど興味も湧かないのだが。こうしたものの中で、童話全集は特に私の記憶に残っている。それだけ目にしたのだろうが、覚えているのは話の筋ではなく、挿絵なのである。海外の画家の手になる独特に味のあるイラストばかりだったのだが、アニミズムが深く根を下ろしたようなそれらは幼少期の恐怖感と結びついているように思える。やはり本棚にあった有名なモーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」などもそうだったが、私はそれらの絵に得体の知れない不気味さを感じていた。
 andrey kiritchenkoは昨年の『interplays, in between』に次いでolga indovinaをアートワークに使っているが、本作の彼のイラストは、そうした精霊や魔法が跋扈するミステリアスな空想の世界を思い出させる。裏ジャケ(文庫本型パッケージなので表4?)の傀儡(くぐつ)なども夢に出てきそうだ。そう言うと、本作に散りばめられた日常的な物音や空間的な音響に霊魂でも宿っていそうだが、音に何ものかが棲むような印象はない。語義的に矛盾を孕んだ表題が示すように、本作は物事やその認識の二面性に焦点を当てており、side Aでギターを、side Bでピアノをそれぞれフィーチュアしているが、音は素朴に響いている。すうっと体に染み入るように。むしろ、音は音ですよとでもいうように。(中澤始)




05/18 UP!


secretly canadian
http://www.secretlycanadian.com/

 あたたかい。・・そう思わず口にしてしまうほど、暖かい一枚。まるで暖かい手作りのシチューを飲んでいるような、安心感に包まれた、ほっこりとした気持ちになっていきます。そんな全体的に暖かなオーラに包まれた今作は、アコースティックなサウンドが特徴的ですが、決してアコースティックに寄りかかりすぎることはなく、ロックなナンバーや機械的な音も随所に織り交ぜている、オリジナリティーに溢れたサウンドが印象的。キラキラと乱反射する電子音がアコースティックサウンドの上を舞うM-3、しなやかなヴォーカルを堪能することが出来るロックナンバーM-4、美しいギターのアルペジオが印象的な美メロROCKのM-6。曲ごとに違った暖かさが生み出されているようです。物憂げなヴォーカルは、時に悲しげに、時に優しく、心にじっくりと染み渡っていきます。幸福感に溢れたフォークサウンドで始まる前半部。余分なものは一切なく、だからこそ引き立つ「歌」と「メロディー」を手に取るように感じることが出来ます。仲の良い友人達が参加しているという本作。・・なるほど、気心が知れた友人達と楽しく音を作りあげている様が目に浮かぶようなピースフルでゆったりとした心地良いまったり感が随所に現れているようです。そして、彼自身が音楽を心の底から愛しているのが手に取るように伝わってきます。お気に入りはM-8。ラストに向かうにつれて、だんだんと激しさを増すヴォーカルは、まるで前半とは別人のように情熱的。変拍子ドラムのどっしりしたリズムがカッコイイM-11。優しさと激しさを7:3の割合で秘めた今作は、知らず知らずのうちに曲にのめり込んでいく不思議なパワーを持っています。人間味溢れる歌、ありそうでなかったシンプルで力強いサウンドという大きな二本の柱に支えられて繰り広げられる、素晴らしきこの一枚。現代の過大に着色された楽曲の中において、このアルバムは唯一無二の存在感を眩く放つのではないでしょうか。何も持たない美しさみたいなのをヒシヒシと感じます。曲本来の持つ輝きが一番伝わるのはやっぱりシンプルなアレンジなのだなぁ、と改めてそう実感しました。暖かい歌に飢えたあなたへ、この一枚を是非。(オオキサエリ)




05/17 UP!


ant-zen

http://www.ant-zen.com/

 インダストリアルだなあ電子雑音だなあと、いうような印象が聴いててフツフツ湧いてきて、だけど独ant-zenは堂々「industrial music, chilling ambient,technoid rhythms & power electronics」と専門分野を掲げているレーベルなので、そりゃそうでしょと言われると返す言葉がない。morgensternはこのレーベルからもう何作か発表している女性で、威猛高だと言うべきか、残虐趣味だと言うべきか、はたまた物々しいと言うべきか、トゲ付き鉄球のついたmorgenstern(戦棍)をアイコンにしてまでいる。まあ音のイメージと合致しているかもしれない。ダークでマテリアリスティックな本作のテクスチュアは、近そうではあっても、IDMだとはちょっと言い辛いし、だからってハーシュなノイズも聴かれず、やはりインダストリアルだと言うのがニュアンスとして合っているように思える。そう言うからにはと、十ウン年ぶりくらいにご無沙汰なミニストリーを聴いたら、ハードロックにしか聴こえずこんなに聴き易かったかと自分の記憶を怪しんだ。おかしいなーってんで、他にNINとスリップノットを引っぱり出してみたが、思い違いも甚だしいというか……もういっそそんな私が可愛らしいと開き直って、「きょうの音楽逍遥」って感じにしたらダメですか、ダメですか。一応、音の粒が立ってるというかテクノイズといってもやっぱりエレクトロニカ以降の感じがあって、プロセスの問題かなあ、でも比べたの生ドラムだしなあ、と。いやでもヘヴィメタの高速生ドラムの人間業と思えないバスドラ連打って、クリック音の快感とちょっと関係ありそうじゃないですか、ないですか。(中澤始)




05/13 UP!


western vinyl
http://www.westernvinyl.com/

 名盤である事には間違いないのだが、言葉で説明するのが難しい。初めて聴いた時はフランク・ザッパや、キャプテン・ビーフハートを思い出した。サイケデリックで、民族音楽で、ヒップホップを通過したビートで、アルヴォ・ポートのようなコーラス、なのにすんなり聞けてしまうポップソング。dirty projectorsのサードアルバム"the getty address"の構成要素を上げると上記のようになる。オーケストラを導入した前作と比べても格段に進化-成熟した本作は、ビョークのセカンドからサードへの進化を思い出してもらえばイメージしやすいかもしれない。実際荘厳な雰囲気はどこかホモジェニックを思わせる、とは言えさすがにアイスランドとアメリカ西海岸の違いは明白で、こちらは湿度を全く感じない乾いた重厚さを醸し出している。様々な音楽的要素を集めた今作だが、この統一感はdirty projectors=dave longstrethの個人的な趣向では片付けられない何かがあるような気がした。まず使われている民族楽器がオリエンタルと言われるようなインドや中国の楽器ではなくアフリカの楽器が多い事、ヒップホップ的なビート、ここまでは黒人の音楽に由来する。そしていくつかのオーケストラと、聖歌のようなコーラスは白人のものだ。つまりこの作品をアメリカ文化のルーツ同士の融合と捉える事もできるのではないだろうか。そこにサイケデリックな要素と現代のテクノロジーを投下すれば、the getty addressの世界は出来上がる。最後にこの雑多な世界を繋げる橋渡しの役目として、そして最大の魅力としてdave longstrethのナヨナヨした独特のヴォーカルが存在している事を言及しておこう。
(畠山地平)




05/11 UP!


static discos
http://www.staticdiscos.com/

 remix誌の5月号は見た? 巻頭で「エレクトロニック・ミュージック・ファイル2005」という特集が組まれてて、エレクトロニカ&クリックハウスら辺の最近の動向をまとまった形で読めるのでお薦めです(もう次号出ちゃってるけど)。こういうの随分読んでない気がして、各論から広くまでも見渡したこの手の話は短期トレンドの白書的なものでいいからもっと読みたいなとか思いながら目を通したんだけど、それはあながち、私が情報重視の分類マニアだからというだけじゃなくて(ホントはそうでもないんです。ただ「ジャンルの垣根を越えて云々」ていうムチャな賞賛がキライなだけ)、点でしかない一つ一つの作品から、シーンやひいてはこの雑誌の表紙のコピーにある「the shape of music to come」というようなものに気付くために、必要な事だと思うんです。で、この特集中、メキシコに焦点を当てた記事があって、murcofを聴いて以来この辺が気になっていた私は「待ってました!」とばかりに飛びついた訳です。現地レポから、static discosをはじめとする主要レーベルガイドもあり、ディスク選では本作もピックアップされてます。murcof/terrestreもきっかけの一つに違いないけど、このfaxも、traumやmutekからのリリースでなかなか秀逸な曲を聴かせていて、気になっていた人。static discosから既に2枚のアルバムをリリースしている彼のこの新作はタイトル通り、コラボ作と彼の曲のリミクスを集めた編集盤で、portableやmike shannon、ultra-redなど著名人はじめ、murcofからよく知らない新人まで収まってまっす。全体的にクリッキーで、導入盤としてもよさげ。(中澤始)




05/09 UP!


noise factory records
http://noisefactoryrecords.com/

 今度行われるライヴイベント「canada WET」が面白そうだ(5/13大阪、5/14東京)。何がって出演陣なのだがそのラインナップは、昨年末日本盤をリリースし2月の来日も話題を呼んだ、もう一つのdfa(鼻が象)=death from above 1979、やはり昨年のアルバム発売以降各地(フェスとか)を荒らし出している注目株=the dears、そしてarts & craftsコミュニティから筆頭ユニットbroken social sceneとthe stars、アンドモアといった感じ。現在ディスクユニオンでarts & craftsの特集をやっているのだが(〜5/22)、このレーベル周辺はとても充実した時期を迎えているようで、その中でも上記2バンドの最新作は特に大きく取り上げられている。本作はそのbssの、noise factoryから出た初作だ(arts & craftsから再発されてるみたい)。エレクトロニクスが控えめに効いたポストロックで、私はシカゴのそれを思い出した。それが懐かしいのか頼もしいのか、不思議で少しじっくり聴いてみて、どうやらポストロックと呼ばれるような音楽を最初に体験した時のような感じらしいと思い当たった。穏やかに感動が満ちる11曲目はとりわけ素晴らしい。ちなみにnoise factoryは、この大所帯バンドの中心人物二人の、bssに先立つユニット=k.c. accidentalや、tinkertoy、sparrow orange、beef terminal等を擁し、良質なポストロック〜フォークトロニカを輩出している気になるレーベル(ジャケも気になる)。「今、カナダが熱い!」とか吹いて回る程は知らないんだけど、思い当たる節はなくもなく、五大湖を割いて走るモントリオール―トロント―デトロイト―シカゴのラインに、それは1000kmを越える長さがあるというのに、何か期待を篭めてしまったりもするワケで。篭め過ぎなくらい。(中澤始)




05/06 UP!


cut
http://www.cut.fm

 蛍光灯はアーティストを惹きつけて止まない。池田亮司は2003年に発表したインスタレーション『DB』で、暗転した無響室での音響体験を終えたばかりの体験者に向けて、天井を蛍光灯で埋め尽くしたホワイト・キューブを用意し、それらが発する信号を圧倒的な量をもって届けてみせた。自作音具optronを操る伊東篤宏は、蛍光灯の明滅と同時にそれが発するノイズを増幅して出力する。アクションをほとんど伴わないにもかかわらず、暴力的なまでにフィジカルなパフォーマンスを楽器演奏の文脈において行っている。美術家を名乗り、演奏家とのセッションばかりかダンサーとの異種格闘技戦をも厭わない彼のスタンスはクリスチャン・マークレイを彷佛とさせる。
 本作は25年を越える活動に終止符を打ったvoice crackのメンバーであったnorbert moslangの同名のインスタレーションの記録だが、cutから同時リリースのjason kahnのアルバムにも参加しているように、彼がソロになってからも変わらずcracked everday-electronicsを演奏していることを知れば、ここで蛍光灯が素材に選択されている事は驚くには当たらない。60分に渡って途切れることなく続く蛍光灯音響は、左右のチャンネルが完全にセパレートされており、ヘッドフォンで聴けば平衡感覚が危うくなるほどいびつなバランス。そのインスタレーションが具体的にどのようなものであったかは確認できなかったが、ほぼ剥き出しに聴こえる音色は蛍光灯そのものであり、この為に作られたプログラムを積んだP160なる小型コンピュータは、密閉されたガラス管内の水銀蒸気中で起こる放電が生む信号の連続に緩やかな変化を与える。私達が普段の生活の中で知覚している現象を異化するアプローチは「メディア・アート」の常套手段だが、コンセプチュアルな試みのみに終わることなく、そこから音楽的な豊かさを微かながらも浮かび上がらせたこの作品は、自らのスタイルを貫いて活動を続けるアーティストこそが為せる業といっていいだろう。(TH)




05/02 UP!


audio dregs
http://www.audiodregs.com/

 smalltown supersoundからのデビューアルバムに続く新作は、audio dregsから。彼の音楽は、おそらく自身が手掛ける写真やドローイング等と同列、もしくは延長線上とも言える、柔らかく、どこまでも無垢な情景を描き出す。主におもちゃ楽器や電子音などに、フィールドレコーディングされた素材を重ね合わせる作風を軸に、音を構築する姿勢は、正に唯一無二。アルバムのインナースリーブや、彼のウェブサイト等を見て頂ければおわかりでしょう、そんな被写体や、まるで子供の落書きの様なドローイング達はしかし、音を如実に物語っている。それらは勿論難解な音楽なんかではなく、誰もが目の当たりにしている様な、日常のなにげない風景なんかを音に封じ込める。そんな、前作以上に内省的な音世界は、更にプライベートな雰囲気へと移行している。主に身近で録音されたと思しきフィールドレコーディングされた素材を丁寧にトリートメントし、構築といった手法は前作同様ですが、しかし新たな側面も随所から聴こえてくる。2曲目の、ある種荘厳で神格化した様なサウンドに、まず驚かされた。そんな、サウンドアートにまで接近している様なトラックから、ドラムサンプルが滑り込んでくるバンドサウンド??にもまた驚かされたりと、アルバム通しての統一感はあるものの、前作に比べたら幾分即興性や柔軟性を感じ取れる作品に仕上がっている。ちなみには12曲目。これはスペインのlucky kitchenからのリリースで知られるasunaのオルガン作品からインスパイアを受け、製作された楽曲なのだそう。だが、そういった情報がなければasunaがゲスト参加している??といった、愛らしい楽曲に仕上がっていた。(高橋潤)


SIN
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p*dis BUYER
中澤始
音楽ライター。
見切り発車でフリーに。見切り過ぎだよトホホ…。
書きます。仕事ください。
本多千鶴
1974年生まれ、山形県出身。音楽ライターを志す栄養士。
「KITTEN」「ミュージクマガジン」誌などで書いています。
小野寺徹
音楽ライター。時折MM誌にレビューを書いてます。理屈よりも音で伝わるような音楽を言葉で伝えるのに苦心しています。
TH
1975年千葉県生まれ、杉並区在住 メールはこちら
オオキサエリ
1983年生まれ 
東京都在住
インディーズレーベルでのアルバイト経験有
音楽ライターを目指して頑張っています!HP→
畠山地平
電子音楽ユニットvalyushkaとソロで音楽活動をしている。
その他現在はライブイベント、「radical mute geek」の運営等。HP→
筒井真佐人
駆け出しライター。traksyなどでもライター活動をしている。Dance and Media Japanでmax/mspのワークショップを行なう。またレーベル「ONZO」にも所属し、パフォーマンスイベントの主催など行なう。
高橋潤
kitten、MAG FOR EARS等に書かせてもらっています。
http://d.hatena.ne.jp/zu-hause/
ユキシュンスケ
バンド、ソロにて都内で音楽活動をしています。
ときに映像の音楽なども手がけながら精力的に活動中。
その他、ライブイベント「childlike tree」の運営など。
http://yukai.jp/~nowhere/
大崎暢平
hueレーベル専属レビュワー。お叱りのメールはhueではなく、こちらへ。
mondii
PLOP LABEL A&R