mü-nest Interview (interview with Wei)

 

p*dis Label interviews vol.2
2010.09.06

翻訳:海法進平

p*disレーベル・インタビュー・シリーズの第2回目は、starkeやokamotonoriakiなど、日本人アーティストをたくさんリリースしているマレーシアのクアラルンプールを拠点とするレーベルmü-nestです。シンガポールのKitchenとともに、東南アジアのエレクトロニカ・シーンを引っ張っていっている彼らは、日本人の感性と非常に近い繊細さを持っていると言えます。レーベルオーナーのWeiさんにマレーシアでのレーベル運営について聞いてみました。特に若いアーティストへのアドバイスはとても有益なものだと思います!

1. まずはじめに自己紹介をお願いします。どのようにしてmü-nestをはじめたのですか?

(雨が上がりの匂いがする夜更け)
こんばんは。ウェイです。マレーシアのクアラルンプールにあるmü-nestというインディー・レーベルを運営しています。こういったインタビューの機会が貰えるなんて僕にとってもこの小さなレーベルにとっても光栄なことだよ。

mü-nestは4年前の2006年に地元のインディー・シーンでとっても尊敬されていた年配の方と一緒に始めたんだ。全てはクラアラルンプールのインディー・フェスティバル(この時nobleのKazumasa Hashimotoが参加)で彼を手伝った時に始まって、当時のシーンはバンド・サウンドばかりだったから、よりエレクトロニックをベースとした音楽を自分たちが紹介し、広めるべきだと感じたんだ。僕はエレクトロニック・ミュージックの大ファンだから(特に日本のエレクトロニック・ミュージック)、じゃあレーベルを始めようと彼に持ちかけて、それがmü-nestの誕生だね。

僕はmü-nestをエネルギーに満ち溢れた若手のアーティスト達を発信するプラット・フォームだと位置づけていて、彼らとできるだけ近い距離で活動し、ダイヤの原石を掘り起こす。そのアーティスト達がシーンで認知され、大きなレーベルへ移籍したり、将来のキャリアになってくれれば本望だよね。個人的にはもっと地元のマレーシアのアーティストが世界に飛び立っていけるようなレーベルにしたい。Filcaはとても上手くいったと思ってるよ。課題があるとすれば、地元のアーティストが世界に通用するレベルまでもっとクオリティーを上げなければならないことかな。長い道のりだけど絶対にこの方向を地道に歩んでいきたいね。

2. あなたはこれまで多くの日本人アーティストをリリースしていますよね。クアラルンプールから彼らをどうやって見つけたんですか?

日本のエレクトロニック・ミュージックは大好きだよ。インターネットで常に日本のアーティストやレーベルを追ってるし、どんどん新しいアーティストが出てきているよね。nobleのマネージャー、久保さんともさっき話したインディー・レーベルで知り合って友達になったんだ。彼が日本のインディー・シーンへのドアを開いてくれたおかげで、mü-nestが日本でも認知されるようになり、今では日本のアーティストからたくさんデモが届くようになったし、そうやって新しいアーティストを発見してるね。

3.マレーシアではずっと前から日本のエレクトロニック・ミュージックは人気があって、知られていたんですか?

全くなかった、、、とても孤独な旅だったよ。なんせここでは日本のエレクトロニック・ミュージックに触れる機会なんてなかったから、mü-nestを始める前は共感できる友達もほとんどいなかった。レーベル立ち上げ後は、ラッキーなことに地元の新聞でオススメの日本人アーティストのコラムに書いたり、マレーシアの国営ラジオ局で番組を持たせてもらったり、自分の好きな音楽を紹介できるチャンスがあって、その後Flicaが当たったあたりから、地元でも日本のエレクトロニック・ミュージックに興味がある人たちがけっこう出てくるようになったね。もっと日本のアーティストがここクアラルンプールに来てパフォーマンスをしてくれると広がって行くと思うな。

4.あなたのレーベルのカタログを見渡すと、特にFlicaのアルバムは日本でとてもよく売れました。彼の音楽は日本人にとって親しみやすいものだと思います。あなたはどうして彼の作品が日本で高く評価されたと思いますか?

正直ここまでのヒットは考えてもみなかった。Flicaもびっくりしてたよ。今振り返ると、Flicaは日本のドラマが大好きだし、僕もそうだけど村上春樹の大ファンだから、そういったことが感覚的に関係しているのかも。けど一番大きいのは、多くの日本人のように、Flicaがとても繊細なところだと思う。その繊細さが音楽によく現れているし、そこで繋がれることによって音楽に入り込みやすインディーゃないかな。あと、デザインがミニマルで、フォントが小さかったり、そういうパッケージも日本のリスナーにアピールできたと思うよ。Akira Kosemura(Schole)とHaruka Nakamura(Schole, Kitchen)の二人のリミックスも大きかったね。

5.マレーシアの音楽シーンについて教えてくれますか?エレクトロニカはマレーシアでも聴かれていますか?

マレーシアにもインディー・シーンがあるけど、ほとんどがバンドだね。マレーシアのインディー・バンドはけっこう定評があるんだよ。DJやクラブ・ミュージックをインディー・アクトと数えないとして、マレーシアにおけるエレクトロニック・ミュージックはまだまだマイノリティーだと言っていいね。おそらく多くのオーディセンスはステージでツマミをいじってる人よりバンドのパフォーマンスを見たいんだと思う。とは言え、ここでのエレクトロニック・ミュージックはまだ始まったばかりで、エレクトロニック・ミュージックをやっている若いアーティストもどんどん増えてるし、ここ数年で地元のオーガナイザーもエレクトロニックにフォーカスしたイベントを海外のアーティストを呼んで打ったりしてるから、次の2、3年でマレーシアにもしっかりとしたエレクトロニカのシーンが出来上がることを期待したいね。あ、すごく小さいけど、インプロやエクスペリメンタルのシーンもあるよ。

6. ニュー・リリースのokamotonoriakiについて教えてください。彼をどのように見つけて、どのようにリリースすると決めたのでしょうか?彼はもともとヴィジュアル・アーティストでこれが彼にとって初の音楽作品ですよね。このすばらしいデビュー作品についてどう思いますか?

憲昭さんは何年か前のScholeマガジンに付いてきたCD-Rで初めて聴いて、シンプルなトラックだったけどすごい印象的だったんだ。直ぐに連絡して、それ以来連絡を取り合うようになったんだ。リリースの話を持ちかけたのは去年だったかな。その時は[Post-foetus]のアルバムにかかりっきりの時期で忙しかったけど、リリースが終わったあとにアルバムのコンセプト、トラックのディテール、パッケージのデザインをどんどん決めて、その時にやろうと決めたDVDは本当に良い結果に繋がったね。憲昭さんはとても才能溢れるアーティストで、ビジュアル・アーティストというバックグランドが彼の音楽に大きく影響していると思う。例えば”Wandering”なんか、象がふざけて歩いているような感じで、”Home”は蝶が蛹から飛び立とうしていて最後には大空へ羽ばたいていくような、この曲はmü-nestのイメージにピッタリだったからレーベルのオフィシャルのテーマ曲としても使おうかとも考えた(笑)。音楽的なセンス、メロディ・センス、技術的なスキル、どれをとっても抜群で、彼はとても有望なアーティストであり、僕は彼が作るビートがとにかく大好きなんだ。なにせ僕はビート狂だから(笑)。アルバムを出さないわけにはいかなかったよ。

 


 

7. mü-nestからリリースしたいと思っている、日本人の若いアーティストにアドバイスをお願いします。

そうだね。僕としては次に挙げる点が若手のインディー・アーティストに伝わるとうれしいな。もちろん他のレーベルにアプローチする時も参考にしてほしい。

    - 自分自身であること、自分、思想、感情、生活を表す音楽を作ること、レーベルの人ならすぐに気持ちがあるかないか分かるからね。
    - そのレーベルがどんな音楽に興味があるかを理解し、デモテープを送る前によくチェックすること(例えば僕がロックとかドローンのデモ音源を貰ってもどうしようもできないよ)。mü-nestにとって、メロディーは重要な要素で、もしそこにビートがあればより良いかな。なんせビート狂だから(笑)。
    - いつ何時も完成したアルバムを送って下さい。2〜3曲送られてもレーベル側としてもできることはあまりないので。
    - 意見や感想にオープンであること。レーベルもアーティスと同じくらい良い物にしたいと思っている訳だから、そういった意見や感想を聞き入れ、そしてお互いがオープンに話し合える関係性をレーベルと築いてほしい。
    - できるだけ多くのライブを重ね、他のアーティストとコラボする(音楽でも映像でも)。こういったことが自分の音楽に深みを与え、同時にキャリアへも繋がる、そしてレーベルの人達との出会いのきっかけでもあるから。
    - たとえレーベルからあまり反応がなくても落ち込まないでコンタクトを取り続けること。レーベルもコンピレーションやリミックスなんかをやっているから、そこに参加できるオファーがあるかもしれないしね。

8. 最近のお気に入りのアルバムを5枚あげてください。

特に順番はないけど:

“Above The Winters Oaks” − Pawn (The Land Of)
夜ドライブしながら聞くと、雪の結晶が空から降って来るのが見えるんだ。恐ろしいほどに美しい。アメイジング!

“Melody / Summer” − The Tumble Sea (Future Recordings)
これは隠れた逸品だよ。どうしようもなく感情の波に流されてしまう美しいポスト・クラシカル!これがフリー・ダウンロードなんて信じられないよ(違法じゃないよ)、それに加えてCDもね。頼むから見逃さないでほしい。

“Acoustic View” − me:mo (Disaster By Choices, reissue)
この愛しいアルバムはとてもデリケートで繊細なエレクトロニック・ミュージック。2007年に発売された時からずっと好きなんだけど、ObsilやPopulousリミックス付きでイタリアのレーベルから再発されたんだ。

“Vent” − Serph (Noble)
日本のレーベルで大のお気に入りはnoble。どのリリースもいつも驚かされる。一番最近のリリースであるSerphのVent。このアルバムは自分の中で今までになかった音楽的なイマジネーションが溢れていて 、いろんなジャンルがブレンドされている。驚くべきことにSerphはまだ20代前半だからね。

“Show Us Your Weak Side” − Muxu (Monotonik)
FilicaとHuat Liang (マレーシアのポスト・ロック・バンド Citizen Of Ice Creamのギタリスト) のサイド・プロジェクトMuxuのEP。新譜じゃなくて、2007年に[Monotonick]からリリースされて、最近になってまた聴いてるんだけどこれが良くてね。疑い用のない生々しいサウンド、このモチーフとエモーションには未だに息を飲んでしまう。“Let’s Walk on The Frozen Sea”を聴いてほしい。僕の言っていることがわかるから。

9. 将来的なリリースやプロジェクトの予定を教えてください。

近々mü-nestはPlop(Nature Bliss)とコラボでシリーズ作をリリースするんだけど、その作品にはme:mo、Kyo Ichinose、その他にもいろんなアーティストの新しいアルバムが含まれてるよ。今取りかかっているのがマレーシア人のアーティストSilent Keatの新しいアルバムで、リリースは来年予定。あとはPawnの新プロジェクトPoplambに、上手く行けばStarkeのセカンド・アルバムも。その一方でmü-nestのサイトではリリースに際して僕らの親愛なる仲間達によるスペシャル・リミックスをどんどんアップしていって、その内リミックスのプロジェクトも出来そうだね。とにかくmü-nestの全てがエキサイティングな方向へと向かってるよ!

 

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