hue and cry

Tamas Wells Japan Tour 2008 ツアー後記

タマス・ウェルズのツアーを振り返って、つらつらと書き始めたところ、気づいたら5000字にも及んでいた。ぼくの文章力ではその感動を伝え切ることは不可能だから、それはもう諦めよう。だからできるだけ簡潔に。

ツアー開始の前月にミャンマーを襲ったサイクロン・ナルギスのせいで、一時は開催が危ぶまれたものの、予定通りツアーは行われ、こうして無事に終えることができたのはとても幸運なことだった。サイクロン後のタマスの多忙ぶりは尋常ではなく、いくらかのことを犠牲にしてまで日本に来てくれたことを感謝している。

今回、自分たちでオーガナイズした名古屋以外の5公演は対バンをつけなかったのだけど、それがブッキングの際の最初の決めごとだった。地元のバンドやアーティストをブッキングすることで数十人くらいは集客が増えたかもしれないけど、ぼくはタマス・ウェルズが好きな人だけに来てもらいたかったし、そんな空間を作りたかった。それで結果的に昨年よりもずっと集客が増えたことは感動的だったし、自信にもなった。


▲@名古屋cafe dufi

オーディエンスも最高だった。タマスはその歌声だけで自分の世界を、自分の空間を作りあげる。彼の歌声は本当に小さくて(しゃべる声のほうがずっと大きいぐらい)、ギターの音も小さくてエンジニア泣かせなんだけど(笑)、オーディエンスはそのせいで真剣に耳を傾けないといけないから、余計にその世界に引き込まれてしまうのだ。ぼくはこんなに静かなライヴを他に知らないし、すべてのオーディエンスがあんなにも真剣に聴いているのも稀だと思う。実際、静かすぎて客席の後ろでお金の計算のためにお札を数えるのにも気を遣うほどだったから(笑)


▲@京都flowing KARASUMA

ファイナル以外でフロントアクトを務めてくれたネイサン・コリンズ。実際は奥さんとのユニットであるthe steadfast shepherdのソロ。シンプルな弾き語りながらオージーっぽい雄大さを感じさせ、メロディーセンスはさすがにタマスの一番の親友とも言えるほど格別。一番年下ながらバンマスとして色々気が回る人だったので、マネージャーとしては大助かりだった


▲the steadfast shephered @鎌倉cafe vivement dimanche

同じくバンド・メンバーのアンソニー・フランシスは最年長。メルボルンの大学で保健科学の講師をしている彼は本来ピアニストだが、今回はバンジョー(とちょっとだけギターも)を担当。景観設計を昔学んでいた彼は、マンホール・マニアでもあり、各都市のご当地マンホールの写真を撮り集めるというタモリ倶楽部のようなマネをしていたのが可笑しかった。


▲アンソニー ピアノソロ @自由学園明日館講堂

白眉はやはりファイナルの自由学園明日館の講堂でのライヴだろうか。この日のみ前座なしのタマス・ウェルズのワンマンで90分のロングセット。彼らが現在演奏できる曲をすべて演りつくしたまさにツアー・ファイナルにふさわしい素晴らしい夜だった。結果的に30%がソロでの演奏だったのは、前述のとおりバンドでのツアーのブランクのせいだったけど、三人での演奏のときはブランクをそれほど感じさせなかった。アンソニーのバンジョーは控えめながらも、随所に存在感を発揮していたし、ネイサンの高音コーラスの貢献は素晴らしかった。実はツアー前はむしろタマスの歌を邪魔するんじゃないかと危惧していたことをここでこっそり謝りたい。東京に戻るまでには覚えると言っていた歌詞のカンニングペーパーは結局最後まで手放さなかったけど(笑)


▲@鎌倉cafe vivment dimanche

この夜はアンソニーによるピアノ・ソロも演奏された。1stの「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」と、2ndの「Melon Street Book Club」。ある意味ではこの2曲こそがハイライトだったのかもしれない。(ちなみにMelon Streetは実在する住所でアンソニーが住んでいる場所らしい)。2ndと3rdの違いはピアノの有無によるところが大きいのは多くの人が感じていると思う。同じ曲でもピアノの有無で印象は変わる。この夜もピアノ入りの曲は「Open The Blinds」だけだった。岡山では初期の名曲「Reduced To Clear」をピアノ入りで演ったけど、その他は演らなかった。「Valder Fields」なんかはピアノ入りで聴きたかったけど、それはまた次の機会ということで。今回、ラジオのインタビューで語っていたけど、タマスはアルバムを作るときは身近にある楽器を使うようにしているそうだ。3rdの場合はミャンマーで購入したギターやバンジョーを使っているし、2ndに入っていたピアノやマンドリンもメルボルンの自宅にそれらがたまたまあって身近だったからに過ぎない。そこにある種の制限を設けることで楽曲により深く向き合える。それがタマスの持論だ。


▲@岡山城下公会堂

日本語でのMCが増えたのは大きな成長だろう(笑)昨年は「ドウモ」と「アリガトウ」しか言えなかったわけだけど、今回はちゃんとセンテンスを言えていたし。これも二回目の余裕と、親友たちがそばにいてくれたことでの心強さのおかげだろうか。レコーディングの小話からシリアスな話まで、曲の合間には相変わらず丁寧にいろいろなことを話していた。直接的に死を歌った「The Day She Drowned, Her Body Was Found」や、ミャンマーに捧げた「Sings I Can’t Read」、そしてほとんどの公演でアンコールで演奏した「Grace and Seraphim」の三曲は神々しさすら感じさせた。ミャンマーはいまさまざまな問題を抱えているけど、タマスはあの美しい大地と人々を愛していて、ミャンマーのために今後も力を注いで行くだろう。NGOの仕事は彼にとってはライフワークであり、現地の貧困の是正こそが彼のゴールだと語っていた。自分一人でできることはあまり多くはないけど、みんなの力を合わせれば何かできるかもしれない、とも。一方で、音楽面でのゴールは特にない、とも語っていたのがいかにもタマスらしいけど(苦笑)彼はただ自分の音楽を作りつづけるだけだ。そこに何かを求めているわけではないから、彼は今後何枚ものアルバムを届けてくれるだろう。ぼくの理想はいつか彼の10枚目とか20枚目のアルバムをリリースすることだけど、どうだろう?(笑)


▲@アイビーホール青学会館グローリーチャペル

彼 のそんな意向もあって、今回アムネスティーインターナショナルと、ビルマ市民フォーラムのご厚意でリーフレットを提供してもらい、ライヴ会場で配布した。 ぼくと同様に、タマス・ウェルズをきっかけにミャンマーの実情を知ってもらいたかったからだ。実際にNGO活動に尽力する彼のライヴで配布したからこそ説 得力もあっただろうし、実際、終演後の会場にはそれらが捨てられていることがほとんどなかったのはうれしかった。彼の説明を聞いて、その意図を理解したう えで、改めて3rdアルバムを聴いたら、印象が全く違いやしないだろうか。ノンPAで演奏された「Grace and Seraphim」。スピーカーを通さずにストレートに響く彼の歌声は単に美しいと表現するのを憚れるぐらい力強さに溢れていた。もはやタマス・ウェルズ 教の宣教師のようですらあるけど構わない(笑)今回のライヴを観ようと思えば観れたけど観なかった人たちがもしいたら、その人たちはもう一生後悔してくだ さい。YouTubeとかにあがっているライヴ映像なんてただの映像でしかないのだから。


▲@自由学園明日館講堂

彼 ら三人にとって、このツアーはとても意味のあるものだった。”タマス・ウェルズ・バンド”でライヴをするのは実に2年ぶりのことで、タマスのミャンマー移 住をきっかけに離ればなれになっていた彼らが日本で再会しツアーをすること、そこにプレッシャーもあったのだろうし、最初は結構ナーバスになっていたけ ど、彼らは三人でライヴをできることを心底楽しんでいた。昨年よりもずっと笑顔で楽しそうに演奏するタマスの姿を観たかたにはそれがよくわかっただろう。 タマスは昨年とは違い、終始リラックスしていた。奥さんが一緒じゃなかったからかもしれないけどね(笑)いずれにせよ、彼らは日本で久しぶりに再会し、す べてをやりきり、タマスは灼熱のミャンマーへと帰り、ネイサンとアンソニーは冬のオーストラリアへと帰っていったのだ。ファイナルの翌日、東京の早朝、彼 らが再び再会を誓って別れるのを間近で見ながら、ぼくは何とも言い難い寂しさを感じていた。けど、きっとこれが最後にはならないだろう。ぼくの夢はいつか 彼の10度目とか20度目のジャパンツアーを行うことことだけど、どうだろう?(笑)

ぼくはタマス・ウェルズに会えてよかったと思う。


▲Tamas Wells live in my living room/一生の思い出!

最後に、ライヴにお越しいただいたすべてのみなさま、関係者のみなさまに改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

以下、セットリスト。

Set list 2008.06.28 @ 名古屋 Cafe Dufi

1. Lichen And Bees
2. When We Do Fail Abigail
3. Reduced To Clear
4. Vendredi
5. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. Stitch In Time
9. From Prying Plans Into The Fire
10. Broken By The Rise
11. Nowhere Man
12. The Northern Lights
13. Signs I Can’t Read

[Encore 1]
1. Valder Fields
2. For The Aperture

Set list 2008.06.29 @ 京都 flowing KARASUMA
1. Lichen And Bees
2. When We Do Fail Abigail
3. Reduced To Clear
4. Vendredi
5. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. Stitch In Time
9. From Prying Plans Into The Fire
10. Broken By The Rise
11. Three Courses And An Open Canoe
12. The Northern Lights
13. Signs I Can’t Read

[Encore 1]
1. Nowhere Man
2. Valder Fields
3. For The Aperture

[Encore 2]
1. Grace And Seraphim

Set list 2008.06.30 @ 岡山 城下公会堂

1. A Dark Horse Will Either Run First Or Last
2. When We Do Fail Abigail
3. Lichen And Bees
4. Reduced To Clear
5. Vendredi
5. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. Stitch In Time
9. From Prying Plans Into The Fire
10. Broken By The Rise
11. Three Courses And An Open Canoe
12. The Northern Lights
13. Signs I Can’t Read

[Encore 1]
1. Valder Fields
2. For The Aperture

Set list 2008.07.04 @ 青山 アイビーホール青学会館グローリーチャペル

1. Lichen And Bees
2. When We Do Fail Abigail
3. Reduced To Clear
4. Vendredi
5. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. Stitch In Time
9. From Prying Plans Into The Fire
10. Broken By The Rise
11. Three Courses And An Open Canoe
12. The Northern Lights
13. Signs I Can’t Read

[Encore 1]
1. Valder Fields
2. For The Aperture

[Encore 2]
1. Nowhere Man
2. Grace And Seraphim

Set list 2008.07.05 @ 鎌倉 Cafe Vivement Dimanche

1. For The Aperture
2. When We Do Fail Abigail
3. Reduced To Clear
4. Vendredi
5. I Want You To Know It’s Now Or Never
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. Broken By The Rise
9. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
10. I’m Sorry That The Kitchen Is On Fire
11. The Northern Lights
12. Signs I Can’t Read

[Encore]
1. Stitch In Time
2. Valder Fields
3. Lichen And Bees

Set list 2008.07.06 @ 自由学園明日館講堂

1. For The Aperture
2. When We Do Fail Abigail
3. Reduced To Clear
4. Vendredi
5. I Want You To Know It’s Now Or Never
6. 14 Acacia Court, Sanctuary Green 3093
7. The Opportunity Fair
8. From Prying Plans Into The Fire
9. Broken By The Rise
10. Valder Fields
11. Signs I Can’t Read

12. A Dark Horse Will Either Run First Or Last
13. Open The Blinds
14. I’m Sorry That The Kitchen Is On Fire
15. The Day That She Drowned, Her Body Was Found
16. Nowhere Man
17. Stitch In Time

[Encore 1]
1. Melon Street Book Club
2. The Northern Lights
3. Three Courses And An Open Canoe
4. Lichen And Bees

[Encore 2]
1. Grace And Seraphim

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