hue and cry

Archive for 2月, 2017

Radical FaceニューEP『SunnMoonnEclippse』

SunnMoonnEclippse

昨年11月にシングル「Sunn」が発表されてからこのときを待っていました。
ラディカル・フェイスの『The Family Tree』三部作以降はじめてとなる新作『SunnMoonnEclippse』がついに届きました!リリースはベンの自主レーベルBear Machineから。
「Sunn」「Moonn」「Eclippse」という3曲入りのEPですが、ふつうのEPとはちがってラディカル・フェイスらしいコンセプト作品になっています。

Facebookに書かれたベンの説明によると、この作品は「観られる」ために作られた作品で、ミュージック・ヴィデオの新たな可能性を感じさせてくれます。

ラディカル・フェイスのプロモフォトや『the Family Tree』シリーズのデザインも手がけるデザイナーGordon McBrydeが映像を担当していますが、『SunnMoonnEclippse』はベンとゴードンによる共同作品とも言える作品になりました。通常、ミュージック・ヴィデオはまず音楽があって、それに合わせて映像を作るというのが通常の作業だとおもいます。そのプロセスは完全に別々のものだと言えますが、『SunnMoonnEclippse』に関しては、音楽と映像が同時進行で制作されており、隣合わせの制作はお互いに影響を与え合ったものだそうです。

もちろん音楽のみでも成り立つ作品ですが、ベンの意図を感じるためにまずはいちど『SunnMoonnEclippse』特設サイトにアクセスしていただきたいです。

http://sunnmoonneclippse.com

「Sunn」「Moonn」「Eclippse」はそれぞれつながり、そしてループするように作られています。なので、このウェブサイトでは映像をオン・オフしたりスキップしたりするスイッチはありません。またベンの友人のLaura Bearlがセンスあるリリックパートを担当していますが、リリックをオン・オフすることは可能です。
(ブラウザによっては映像が途切れることがあるかも)

音楽的には自己制約だらけだった『The Family Tree』シリーズとは違い、いまベンがやりたいことをやっているというかんじ。いろんな意味で音楽に楽しみを取り戻すためのプロセスといった雰囲気を感じます。個人的には「Eclippse」の終盤がさいこうです。

8年をかけた『The Family Tree』シリーズのおかげで、アルバム・フォーマットには興味が薄れている時期のようで、ことしはより短いフォーマットで作品を作っていくようです。すでに別の2タイトルのEPを制作中で、ことし中に届けてくれることでしょう。

Peter Broderick Japan Tour 2016 “Partners” 後記

haneda

昨年9月末、ピーター・ブロデリックが日本でおこなったいくつかのすばらしいライヴについて、彼と過ごした美しい日々について書き記すには少し遅すぎるかもしれませんが、あれから怒涛の日々をなんとか乗り越えてこうして振り返る余裕がでてきたのだと言い聞かせて、すこし筆をすすめてみます。

今回のツアーの計画を話し合いはじめたのはいまからもう1年も前のこと。元々は台湾のP Festivalへの出演依頼があって、そのついでに日本にも来てもらおうという流れになりました。そのときはすでにErased Tapesからピアノ・アルバム『Partners』のリリースが決まっており、「ピアノと歌」という今回のシンプルなセットはピーターたっての希望でした。

ichigayaPhoto by Takeshi Yoshimura

ピーターがサポート・アクトとして連れてきたアイルランドの女性シンガー・ソングライター、ブリジッド・メイ・パワー。大抵そうやって異性のアーティストを連れてくるときはつまりそういうことなのですが、彼らの場合、とても予想外だったのはふたりは実は夫婦だったということ。話を聞くとツアーの直前の夏に結婚したばかり。非公表なのかとおもいきや、京都公演のMCで言ってましたね。「今回のツアーは実はハネムーンみたいなものなんだ」と。

だから、たぶんこのツアーをいちばん楽しんでいたのはピーターとブリジッドだったのかもしれません。ツアーファイナルを除いて必ずアンコールの最初に演奏していたふたりのデュエットによる新曲の親密さと穏やかさを覚えていますか?とても美しいララバイはピーターの新境地です。

brigid_ichigayaPhoto by Takeshi Yoshimura

生粋のピアニストではないピーターがはじめてピアノときちんと向き合っておこなった特別なセット。一度きりかもしれない、たぶんいましかできないであろう演奏。そんなことをおもいながらぼくはそれぞれのライヴで、彼の表現するものすべて残さず記憶しようとなるべく努めました。ひとつとして同じライヴはなかったですし、実際どの公演のセットリストもちがうものでした。

flussPhoto by Ryo Mitamura

2011年のニルス・フラームとの初来日のときにみせてくれたパフォーマンスははつらつとした印象でしたが、あれから5年ほどが経ち、美と静寂とエンターテインメント性を備えたパフォーマンスに彼の成長を感じることができたのがなによりグッときました。

アルバムごと、貪欲に己の興味に従い、みずからの表現を追求しつづけてきたピーター。ひとによってはすごくとっつきにくいアーティストなのかもしれません。でも「ピーター・ブロデリックは音楽に愛されている」。それを確信できたことで、ぼくはずっと彼のすることをすべて受け止めていくのだというそんな決意を感じたのは、ルーテル市ヶ谷教会で歌ったアイルランド民謡「As I Roved Out」の圧倒的なパフォーマンスを聴いたときでした。

芯の通ったピアノの表現力以上に、シンガーとしてのすばらしさがより印象に残った方も少なくはないとおもいますが、クラシカルな感性とポートランド印の歌心の二大武器を手に、これからますます「とっつきにくい”最高の”アーティスト」になっていってくれるでしょう。
(次作はポートランドのアーティスト、デヴィッド・オールレッドと作ったヴァイオリン、コントラバス、声のみの実験的チェンバーフォーク作品です。4月発売)

okayama

最後になりましたが、改めて感謝とお礼を。Republik河崎さん、papparayray山西さん、night cruising島田さん、Club Solanin井上さん、猫町さん、moderado music岡本さん、蔭凉寺の住職さん、Fly sound福岡さん、Flussの黒川さんと小松さん、sonihouse鶴林さん、三田村さん、吉村さん、その他関係者のみなさん、そしてすべてのお客様に厚くお礼申し上げます。

台湾から東京に戻ってきた最後の夜、彼の大好物のお好み焼きを食べてから、いっしょに近所の銭湯にいったことをたまにおもいだします。もう2度とやりたくないし2度とやらないと何度でも言うけど、すばらしい音楽としあわせな記憶に日々支えられてなんとか進んでいます。またどこかで会えるといいね。

ありがとうございました。

foreversad

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